■CWSサロン「破傷風菌に「われ」はあるか」報告
細菌学者の益田昭吾さんによる講義+ゼミ型サロンを久しぶりに開催しました。
今回のテーマは、『破傷風菌に「われ」はあるか』。
最初に益田さんは新聞の活字のコピーを使って文字の「図」と「地」の関係を説明し,地あっての図であることを示してくれました。
つまり、自己(われ)は非自己(環境)あってこその自己なのです。
環境もまた自分であるという「環世界」観もありますが、環境と自分とは切り離せない関係なのです。
そこから破傷風菌の話になるのですが、破傷風菌はなぜ自分にとっての環境に見える人をなぜ殺すのかという話になっていきます。
ここで自己(われ)と環境とをどうとらえるかが問題になります。
難しい話はすべて省略してしまえば、破傷風菌が持つ毒素(人にとっての毒素)は破傷風菌の中にいるプラスミドが持っていて、プラスミドにとっての直接の環境は破傷風菌で、プラスミドと破傷風菌はむしろ相互に支え合っている関係にある。
つまり「環境」とは重層的な構造を持っています。
そして、「自己」の中にもまた、自己と環境の構造が重層的に存在している。
最近、ニュースで話題になった「たまねぎ」を思わせます。
プラスミドは自分にとっての環境である破傷風菌には悪さはせずに、破傷風菌にとっての直接の環境ともいうべき生物に対しては、毒素を作動させ、破傷風菌の宿主である人間を「善意(悪意なく)」で殺してしまうわけです。
こうして、直接の環境とは支え合いの関係を維持しながらも、しかし間接の環境には悪さをしてしまうということも起こるわけです。
しかし、環境が重層的につながっているのであれば、冒頭の「図」と「地」の関係のように、たとえ間接的な環境であろうと、環境を壊してしまえば、いつかは自己(われ)も壊れてしまう。
これはまさに人間が抱えている地球環境問題にも当てはまります。
食欲のために飽食を重ねて、食欲を支える身体を糖尿病にしてしまうのも、同じパターンだと益田さんは言います。
つまり、自己(われ)と環境は幾重にも重なっている同心円構造になっている。
問題はどこまでを「われ(自己)」と捉え、どこからを「環境(非自己)」と捉えるかです。
そして、その同心円を掘り下げていったとき、その中心にあるのはなんのなのか。
そこから最後は「自殺」の問題にまで話は行きました。
今回のサロンのタイトルに関していえば、益田さんのメッセージは、破傷風菌に「われ」はあるかを考えていくと「われ」(自己)とはなにかという思考の地平が開け、世界が違って見えてくる、そして環境問題や健康問題も違った見え方がしてくる(ということは違った対処法が見えてくる)ということかなと私は受けとけました。
益田教授からは叱られるかもしれませんが。
生命はすべて支え合う形でつながっていると考えている私にとっては、いつもながら示唆に富む話でしたが、1回のサロンでは消化不良だったような気がします。
益田さんの以前のサロンの記録映像が次にありますので、関心のある方はご覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=OxIbOe36RkM
また益田さんの一般向けの著作もちくま新書で2冊出ています(「病原体はどう生きているか」「病原体から見た人間」)。
もう少し同心円の中心を掘り下げる続編サロンを、もし参加希望者が3人以上いたら、益田さんにお願いしようかと思います。
益田さんがもし引き受けてくだされば、ですが。
希望者がいたら、私宛にご連絡ください。
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