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2019/10/21

■「維新正観」(批評社)をお薦めします

私が日本の医療問題に関心を持った契機は、本田宏さんの講演です。
当時、私は統合医療に関心があり、昭和女子医大で開催されていた講演会に参加しました。
そこで本田さんの熱い講演に魅了され、挨拶をしたのが多分初めての接点です。

それもあって「ヒポクラテスの会」を立ち上げ、そのキックオフのフォーラムで、本田さんにキースピーチをお願いしました。
その会は、妻が病気になったため、私がすべての社会活動を辞めて引き籠ってしまい、立ち上げたままで終わってしまいました。
本田さんにも申し訳なく思っていました。

私が引き籠りを脱した後、また本田さんと会う機会があり、本田さんは湯島のサロンでも話をしてくれました。
以来、何かと本田さんから刺激をもらっています。

本田さんは、5年ほど前に医師を引退され、市民活動に取り組まれだしました。
しかし、その中でいろんな思いを抱かれたのでしょう、いまの日本の社会の根底に陣取っている歴史観こそが問題だとの認識をますます強めてきています。
そのことはとてもよくわかります。
日本の市民活動はどこかで肝心のものを抜かれてしまっているような気がします。

そんな本田さんから、蜷川新さんの「維新正観」(批評社)という本を薦められました。
1952年に出版された本ですが、2015年に復刊されています。
早速読ませてもらいました。
常識を覆させられることも多い、刺激的な内容です。
いささか言い過ぎではないかと思うところもありますが、蜷川さんの直接の見聞も含めて、きちんとした事実を重ねているので説得力があります。

それに、70年近く前なのに、そこに書かれていることは今もなお新鮮なのです。
たとえば、冒頭にこんな文章が出てきます。

民主の国になった今の日本において、「民主」と正反対である「君が代」を学生々徒に歌わしめようと企てた政治家のある事実は、何を物語るのであろうか。

いまや、そんな政治家が日本を牛耳っていることを思えば、時代はまさに後ろを向いているとしか思えません。

蜷川さんは明治維新について、「「維新」の名は、美しく世人に響くけれども、事態は極めて醜悪なものがあった」として、その裏付け事実をていねいにあげています。

私が認識を一変させられたのは、学校で習った「不平等条約」の話です。
当時も少し割り切れない話でしたが、この本を読んで腑に落ちました。
「不平等条約」は当時の国際状況に置いてはきわめて理にかなった条約で、決して不平等条約などではなく、むしろ明治政府にこそ問題があったのです。
それをさも幕府が不平等条約を締結し、それを苦労して明治政府が条約改定に取り組んだなどという物語に維新政府はつくりかえたわけですが、それがなんと敗戦後も同じように学校では教えられていたわけです。
1945年の敗戦によっても、日本の政府は結局変わらなかったわけです。
私たちが学校で学んだ明治維新の話は学び直しが必要です。

蜷川さんは、「明治維新は、封建制度よりもさらに世界の大勢に逆行せる、専制的有害な一制度の出現を意味していた」とさえ書いていますが、本書を読めばそれが納得できます。
廃藩置県などは(理念はいいとしても実際には)あくどい施策としか言いようがありません。

そうした「醜悪なものであり、法あるいは正義に反する」活動によって成立した明治政府によって、その後の日本は作り上げられてきました。
そして、昭和20年の敗戦によっても、それは壊されなかった。
そこにこそ、現在の日本の社会がかかえる問題の多くはつながっている。
そこから正していかないと、日本の市民活動はただただ権力に荷担するだけかもしれません。

こんな指摘もあります。

〈明治の維新時に〉全国3000万の人民は、決然として立ち、封建の制度を廃止し、人民の間に、身分的差異を置くことを禁絶し、公論政治の原理により、日本の政治を一新し、世界と共に、文明の進歩に浴すべきであった。然るに、天皇も、政府も、各藩も、庶民も、その実現に向い、それを実行するだけの誠意と革新的意気とを、有していなかったのである。
フランスの人民が、マルセイユーズを歌い「祖国光栄の日は来れり」と連呼し、全人民を誘って大革命に猛進したのは、その当時(明治維新)から70余年前の事実であった。当時の日本人も、すでにある程度その事情を知っていたのである。然るに、この種の一人の運動者さえ、日本に現われてはいないのである。

これを1945年の敗戦時の日本に当てはめてもいいでしょう。
いや、いまにあてはめてもいい。
この文化は、いまもなおつづいている。

立ち上がるのを忘れたままに、私は足腰が弱くなってしまいました。
困ったものです。
せめて若い世代の人たちに、本書を読んでいただきたいと思い、紹介させてもらいました。
もちろん、立てないほどの足腰の弱くなった人たちにも。

 

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