■「怒らなくなったら人間は堕落します」
松原泰道さんが参加したフォーラムの進行役を務めさせてもらったことがあります。
もう15年以上前の話です。
「腹が立たなかったら人間は堕落します」とは、その松原さんのことばです。
その話をされる時、松原さんは白隠禅師の有名なエピソードを紹介します。
いつもにこにこしている白隠禅師に、ある人が「腹が立つことはないのですか」と訊いたそうです。そうしたら、「人形じゃないから腹は立つよ」と白隠禅師は答え、そしてつづけたそうです。「腹は立つけど怒らんだけだ」と。
そして、松原さんはこういうのです。
「腹が立たなかったら人間は堕落する。たとえば社会の悪に対しては義憤を感じなかったら社会は堕落するでしょう。ただ、そのときに感情のままにキレて怒ってしまうか、あるいは教え諭すべきか、それを考えることが大事だ」と。
これは、松原さんと五木寛之さんの対談に出ている話です。
オリンピックのマラソンが札幌で行われることになりました。
だれかが怒らないのだろうかと思っていましたが、さすがにみんな大人なのか、怒りません。
小池都知事はかなり怒っていたような気もしますが、いささかショー的でした。
マラソン関係者は腹を立てているのがよくわかりました。
しかし結局はみんなものわかりがいいのにいささか失望しました。
そして、松原さんのこの話を思い出して、本を探しだして読み直してみました。
松原さんが否定しているのは、「キレて怒ってしまうこと」です。
しかも「社会の悪に対しては義憤を感じなかったら社会は堕落する」とも書いています。
そして改めて、社会は堕落に向かっているなと思いました。
腹を立てたら冷静に怒らなければいけません。
そうでないと人間は堕落し、社会も堕落する。
松原さんはもう亡くなっていますが、この文章は、「怒らなくなったら人間は堕落します」と直すべきではないかと思います。
松原さんも、いつもにこにこしている人だったように思います。
幸せな時代に、幸せな環境で生きていたのでしょう。
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