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2019/11/06

■CWSサロン「網野史観から考える現代日本の〈別の選択肢〉」報告

蔵原大さん(東京国際工科専門職大学講師)を講師にした「網野史観」ゼミ型サロンは、蔵原さんのリズミカルで小気味よい話で、とても気持ちの良いサロンでした。
あまり的確な表現ではないでしょうが、蔵原さんという芸能の民の周りに多彩な人が集まった河原場サロンを感じました。

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あらかじめ蔵原さんは参加申込者に「網野史観とは何か」「網野史観はなぜ広まったのか」を簡潔にまとめたレジメを配ってくれていましたので、それを踏まえて、最初に網野史観の要点を蔵原流に簡潔に紹介してくれました。

その後、時々脱線しながら、質疑応答のスタイルで、参加者が知りたいことを起点に話を広げてくれました。
しかし、どんな問いかけにも、即座に蔵原さんは肯定的に応えるので、ついつい蔵原世界に引き込まれてしまうようなサロンでした。
「非人」「無縁」「苦界」「アジール」」「悪党」などの網野史観を象徴する概念に関しても、わかりやすく解説してくれました。

ところで今回のサロンのテーマは、現代日本の〈別の選択肢〉です。
蔵原さんの話も、このテーマを基軸に進められました。
蔵原さんによれば、網野史観は「見方をひっくり返して考えること」を示唆しています。

見方をひっくり返したら、どんな選択肢が見えてくるか。
その一例として、蔵原さんは日本列島周辺の地図をひっくり返した地図を見せてくれました。それだけでいろんな気付きが得られます。

空間だけではありません。
過去への見方(常識・偏見)を変えると未来の別の選択が見えてくる。
そうした時空間の常識的な捉え方(偏見)の呪縛から解放されると世界は広がり発想も変わっていく。
「日本人は〇〇〇だ」という意識から自由になれば、いろんな選択肢を持った未来が見えてくる、と蔵原さんは言います。

そしてオーウェルの小説「1984年」を持ち出して、歴史教育こそ支配のかなめだと言い、過去への偏見(常識)を決めるものが、私たちの未来の〈選択〉を支配するというのです。
未来を左右するのは、過去をどう見るかによって決まってくるというわけです。

網野さんは、いまの日本に深くつながる中世の見方を一変させました。
そこからどんな未来の可能性が見えてきたか。
現在の権威に拠って生きている人たちには危険な考えですが、未来に生きようとしている人たちには大切な考えです。

歴史の見方を変えることで、私たち日本の「選択肢」を自由に議論することができるようになり、未来は変わっていく。
そして、それが今の社会そのものを問い直す契機になればというのが網野史観を踏まえての蔵原さんのメッセージだったと思います。

今回はいわばそのキックオフでした。
網野さんが主張した中世の日本の見方を参照したうえで、学校で叩き込まれた歴史を問い直し、自らの「常識(偏見)」から自由になって、いまの日本社会の見方を問い直し、どんな未来が見えてくるのかを考える。

今度はそこに焦点を当てたサロンを開きたくなりました。
蔵原さんに、網野史観パート2をお願いしようと思っています。
まだ蔵原さんには話してはいないのですが、まあ1回で終わるのはもったいないと思うサロンでした。

網野史観の内容に関しての報告は省略しましたが、蔵原さんは網野さんの書籍をたくさん持参して、紹介してくれました。
もし網野史観に関心のある人は、蔵原さんに訊けば、関心にあった網野さんの本を紹介してくれると思います。
たぶん、ですが。

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