■「資本主義と闘った男-宇沢弘文と経済学の世界」
「経済学者や政治哲学者の思想は、それらが正しい場合も誤っている場合も、通常考えられている以上に強力である。実際、世界を支配しているのはまずこれ以外のものではない。誰の知的影響も受けていないと信じている実務家でさえ、誰かしら過去の経済学者の奴隷であるのが通例である」。
これはケインズが『雇用、利子および貨幣の一般理論』の結び近くで放った警句だそうです。
とても納得できる言葉です。
私もまた、そうした意味では「奴隷」であることは間違いありません。
最近、改めてそのことに気づかされています。
この言葉に出合ったのは、今日、読み終えた「資本主義と闘った男-宇沢弘文と経済学の世界」です。
日経の経済部記者だった佐々木実さんが時間をかけて取材してきた大作です。
ずっと違和感を持っていたいくつかのことが少し納得できました。
たとえば、なぜ宇沢さんはシカゴ大学などにいたのか。
そしてなぜ日本に戻ってきたのか。
また、なぜアメリカではケインズ経済学が評価されないのか。
さらにどうして私が経済学を好きになれないのかも。
まあそれはそれとして、この本は実に面白いです。
政治と経済に関心をお持ちの方にお勧めします。
ちょっと厚いのが問題ですが。
宇沢さんが編著した社会的共通資本シリーズはほぼすべて読んでいますが、惜しむらくは、「報道」問題が取り上げられないままに宇沢さんが亡くなったことです。
できれば「社会的共通資本としての経済学」も書いてほしかったです。
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