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2019/11/12

■節子への挽歌4452:「うつせみと思ひし」

節子

節子も知っている、私の小学校時代の同級生の升田さんに、隔月で万葉集サロンをやってもらっています。
彼女は大学で古代日本文学を教えていたのですが、単なる万葉集の知識を話すサロンではなく、毎回、彼女なりのテーマと物語を用意してくれるサロンです。

これまで5回やってきていますが、その大きなテーマは「われ」意識の変質です。
時評編のサロン報告に書きましたが、今回は柿本人麿の、妻の死を哀しむ「泣血哀慟歌」がテーマでした。
そこでとても面白い話をしてくれました。

「わ」と「な」、つまり「我」と「汝」が、人麿にあっては、相似性の関係であり、時に融合しているというのです。
そして人麿は「現世」という意味の「うつせみ」という言葉を使う時に、ほかの歌人と違って、かならず「うつせみと思ひし」と詠っているのだそうです。
つまり視点が霊の世界、読みの世界、現世ではない世界にあるというわけです。

この話は、実は升田さんには前にも聞いたことがあります。
しかしその時には、ただ面白いと思っただけでしたが、今回はなぜか深い共感を持ってしまいました。

私も最近、現世をなんとなく違う世界から見ているような気がすることがあるからです。
そうすると、現世の「我」と旅立った「汝」が融合して生きているイメージも何となく見えてくるのです。

「わ」と「な」の融合。
「我」と「汝」が入れ替わりうる世界。
彼岸と此岸がつながり、畳み込まれている世界。

涅槃とはそういう世界かもしれません。

 

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