■CWSサロン「コミュニティについて考えてみませんか?-アジアをめぐる旅から感じたこと」報告
湯島のサロンの大きなテーマである「コミュニティ」についての話し合いを呼びかけた上田さんのサロンには10人が参加しました。
上田さんは8年ほど前にビジネスの世界から早期引退され、以来、それまでとは全く違ったテーマを持って、アジアの伝統社会をめぐる旅をつづけてきています。
今回は、アジアの伝統社会での住民たちとの暮らしで感じたことをもとに、私たちの生き方を起点に置いたコミュニティについて問題提起してくれました。
コミュニティを考えることは、私たちの根源的な思いや価値観を問い質すと同時に、日々の生活に直接かかわることであると上田さんは言います。
しかし、「コミュニティ」は簡単に共通の定義が見つかるテーマではありません。
それに、人によって「コミュニティ」の捉え方もさまざまです。
そこで上田さんは、アジアの伝統社会と日本の現代社会を行き交いながら感じた自らの「コミュニティ」体験を踏まえて、コミュニティに関連したさまざまな視点を紹介してくれました。
現在上田さんが一番共感できるコミュニティの定義は「帰ってゆきたい場所」です。
そこでは、家族のように生きている安心感があり、好き嫌いが重要ではない世界があると上田さんは言います。
アジアの辺境の集落に行くと、好き嫌いにとらわれることなく、みんなが家族のように生きている安心感を上田さんは感ずるそうです。
だからこそ、上田さんは繰り返し、そういう集落を訪ねているのでしょう。
そうした中で暮らしていると、人間ばかりか、自然、さらには霊との関係の中で、自分が生きていることを感ずるそうです。
そうした関係は、日本にいると「わずらわしさ」につながっていくのに、そこではむしろ喜びにつながっていく。
それは、自らの居場所が与えられることでもある。
そこには、自分だけが幸せになるのではなく、みんなが幸せになる世界がある。
上田さんは、そうした「関係の中で生きる夢のような時代」が、子供のころ(昭和30年代)には日本にもあったと言います。
そうした実体験を踏まえて、上田さんは、エーリッヒ・フロムが「生きるということ」で提唱した「to have」 と「to be」という2つの人の存在様式や、「中心と周辺」、「間主観性」、さらには「災害ユートピア」、そして「交響圏とルール圏」、あるいはインドのラダック地方をモデルに一時期話題になった「懐かしい未来」などの話を紹介しながら、コミュニティを考えるさまざまな視点を提出してくれました。
「家族」や「風土(関係の世界)」にも言及されましたが、それらの根底に上田さんは「愛」を見ているようです。
最後に上田さんは、自分にとってのコミュニティとして2つの要件をあげました。
それは、「みんなが関係する歓びが満たされている家族になってゆくこと」と「人だけではなく自然、霊との関係の世界(風土)をもつこと」です。
これが、自らの体験からでてきた上田さんの現在のコミュニティ観のようです。
そこから話し合いが始まりました。
「所有と関係性」「完結したコミュニティと開かれたコミュニティ」「日常と非日常における人間の関係性の変化」「地域社会のコミュニティと企業のコミュニティ」などさまざまな視点での話し合いがありました。
「家族とは何か」は、よく湯島でも話題になりますが、今回も話題になりました。
「開かれたコミュニティと完結するコミュニティ」も少し話題になりました。
被災地や巡礼で「コミュニティ」を実感した人も数名参加していましたので、そこでの体験話もでましたが、ちょうど一週間前にサンティアゴ巡礼から帰国した鈴木さんから、巡礼でいつも体験することも、ユートピ体験やコミュニティにつながるという話がありました。
コミュニティを切り口にすると、いろんなことが感覚的に見えてくるような気がします。
ユートピアもディストピアも、コミュニティの裏表かもしれません。
今回は表面(プラス面)からだけの議論でしたが、コミュニティの裏面も話し合いたくなりました。
上田さんは、最後に、「コミュニティ(コミューン)」をテーマに、継続的に話し合い行動する仲間と場をもちたいと呼びかけました。
湯島のサロンでも同じことを考えていたので、私は早速その呼びかけに応ずることにしました。
湯島サロンでは、12月に、今回も参加してくれた杉原さんの「時間意識と自殺予防〜都市でのつながりをどうつくるか」を予定していますが、来年はじめには「ソーシャル・キャピタル」のサロンも企画中です。
また上田さんと相談して、研究会的なものも実現できればと思います。
関心のある人はぜひご参加ください。
| 固定リンク
「サロン報告」カテゴリの記事
- ■湯島サロン「サンティアゴ巡礼に行きました」報告(2024.09.06)
- ■湯島サロン「『社会心理学講義』を読み解く②」報告(2024.09.03)
- ■近藤サロン②「ドーキンスの道具箱から人間社会の背後にある駆動原理を考える」報告(2024.08.29)
- ■第2回あすあびサロンは我孫子の撮影シーンが主な話題になりました(2024.08.24)
- ■第34回万葉集サロン「巻1-5~6の「軍王」の歌」報告(2024.08.13)
コメント