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2019/11/05

■第3回リンカーンクラブ研究会報告

第3回研究会は「代議制と選挙」をテーマにしましたが、前回武田さんから提案された「選挙で投票に行くと一人1万円もらえるという制度」が議論の中心になりました。

 Photo_20191105183101

まず参加者10人それぞれからこの制度への感想を発表し合いました。
絶賛する私ほどではないとしても、良い制度だという人の方が多かったですが、明らかな反対者も2人いました。
それもかなり厳しい反対で、「金権政治」ではないか、お金で投票を誘うのは「下品」ではないかとさえいう人もいました。
厳しい反対が出るのは良いことで、おかげでより議論が深められます。

結論的に最後はみんな納得しました。
なかにはちょっとしぶしぶ感のある人もいましたが、今様に「合意なき決定」ということで、この制度はリンカーンクラブの基本方針の一つになったと思います。
ただし、その趣旨をきちんと説明しないと誤解される、という注意事項が付きましたが。

政治を大きく「権力政治」と「参加政治」に分ける考え方があります。
現在の日本の代議制の政治は、民主主義と言われていますが、要するに権力政治の一つです。
ルソーも、選挙の時しか民主主義が実現されない代議制が権力指向型の政治になっていくこと危惧していました。
リンカーンクラブは、その点を重視し、武田さんは以前から代議制民主主義は民主主義に非ずと主張してきています。

日本でも50年ほど前に「参加民主主義」が話題になりましたが、当時出版されたR.J.プランジャーの「現代政治における権力と参加」(勁草書房)にこんなことが書かれています(カッコ内は私の注記です)。

(公務に関しての)高い地位は政治機構の中で有力な人々、すなわちある特別な地位を認められている公職者(政治家)と非公式な集団(官僚)とによって占められており、より低い地位にあっては普通の市民が義務(公務)を果たしている。
この政治的義務のもっとも低い等級については、そこで遂行される仕事を公共的なものであると考えることはまずおそらくないであろうから、現代の政治文化では政治と権力とが同一視されてしまう。
権力指向型の政治が注意を独占しているところではたいていそうなのだが、人々は、もはや市民を社会に認められた公務担当者としてはまったく考えなくなっている。だが市民性とは公的な地位のことであるし、市民とは公務担当者のはずなのだが。

以上が参加民主主義の基本にある考え方の一つです。
つまり、私たち市民にとって、選挙の時に投票に行くのは、主権者としての義務、つまり公務なのです。
にもかかわらず、選挙の立会人は公務として給与をもらうのに、肝心の投票に行く市民は無償なのです。
なかには時給や生業仕事を犠牲にして投票に行かなくてはいけない人もいるでしょう。

投票に行くというのは代表を選ぶとても大事な活動です。
公務としていかに重要かは少し考えればわかることです。
プランジャーが書いているような、「もっとも低い等級の政治的義務(公務)」ではありません。
ですから投票行為に1万円を支給するのは、国家を維持していくためにはきわめて理にかなっています。

というか、政治や選挙投票の捉え方につながってくる問題です。
そして、いわゆる「金権政治」とは真逆なものであることがわかるでしょう。
サロンでは、こうしたことをもう少し具体的な話も含めて意見を出し合いました。

これは「公務」をどうとらえるかともつながってきます。
日本では「公共性」とか「公務」がきちんと整理されていないと私は思っています。
そもそも「公共性」などという言葉は実にあいまいな矛盾した言葉だと思いますが(「新しい公共」などというばかげた言葉までありますが)、そこまで行くといささかまた長くなりそうなので、いつかまたサロンをしたいと思います。

ちょっと偏った報告ですみません。
しかし、「投票という公務に1万円を支給する」制度の意味はとても深いです。
サロンでは、この制度を軸にした政治への関心を育てる仕組みなどの提案もありました。
これで一つの政党ができるという人までいました。

いずれにしろこの制度はもう少し内容を整理して、社会にも呼び掛けていこうということになりました。
参加されていない方にはうまく伝わらないかもしれませんが、関心のある人はぜひリンカーンクラブ研究会に参加してください。
たぶん時々話題になっていくはずです。

次回は127日。
テーマは「報道と選挙、そして報道権」です。
話題提供は坪田さんと武田さんです。
これまた大きなテーマですので、できるだけとんがった議論にしていければと思っています。
報道に関わっている方の参加を期待しています。

 

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