■第4回リンカーンクラブ研究会報告
第4回リンカーンクラブ研究会は「政治と報道」をテーマに選びました。
ゲストに元日経政治部記者だった中西晴史さんに来てもらいました。
中西さんは、ご自分の意見も含ませながら、政治記者時代の話をしてくれました。
中西さんの話からは、新聞も新聞記者もかなり変わってきてしまったことへの哀感のようなものが伝わってきました。
中西さんの話の後、やはり日経記者だった坪田さんが、その変化を少し客観的に補足してくれました。
それを踏まえて、参加者での話し合いが行われました。
具体的な新聞の評価に関する意見も出ましたが、経営的な面でほとんどの新聞社は自立困難となっていることが根本的な問題のようです。
そのため、権力に対峙する新聞はもうなくなってしまった。
コストダウンのために現場取材する記者が少なくなり、取材費も切り詰められているので、直接取材記事が少なくなってきている。
伝えるためには、写真さえにも「やらせ」が入りやすく、新聞報道を受け止める読者がしっかりしないとただ操作されるだけになりやすい。
新聞はむしろ自社の報道の立場を明確にし、もっと主観的な主張をするべきではないか。
アメリカでは権力に対峙する姿勢の新聞が講読者を急速に増やしている。
新聞購読者も減ってきているが、逆に子ども向きの新聞を子どもたちのために購読する家庭が増えてきている(子ども時代から洗脳されていく恐れもある)。
相変わらず国民を啓蒙する姿勢が残っている。
などが話題になりました。
リンカーンクラブの武田さんは、NHKのような国営の新聞をつくり、国民が直接選んだ委員会で編集したらどうかという提案をしました。
武田さんの提案はいつもその真意がなかなか理解されないきらいがありますが、報道権は主権者がしっかりとおさえるべきだという考えが根底にあります。
市民主導の新聞への試みはこれまでもありましたが、なかなか成功はしません。
しかし、いまこそ、そうしたメディアが必要になってきているように思います。
坪田さんは、最近また注目され出している桐生悠々の話も紹介してくれました。
ちなみに、北陸朝日放送が制作した「言わねばならないこと〜防空演習を「嗤った」男・桐生悠々」は第1回「むのたけじ地域・民衆ジャーナリズム賞」を受賞していますが、今年の12月28日に、テレビ朝日で再放送されますので、ぜひご覧ください。
いずれにしろ、残念ながら現在の新聞は、政府にからめとられているような気がします。
そのために、新聞の存在意義が失われ、購読者に魅力を感じさせられなくなってきているのではないかと思います。
政治にとっても新聞の役割は大きいと思いますが、政府も新聞社も短視眼で考えているため、その可能性を活かせずにいるような気がします。
それが残念でなりません。
このテーマはもう少し掘り下げていければと思います。
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コメント
佐藤様
先日のコメントありがとうございました。
今回のご報告、興味深く拝読しました。
黒崎正己氏の『桐生悠々、忖度ニッポンを嗤う』を読んだところでしたので番組の再放送が待ち遠しいです。
その著書のなかでむのたけじ氏の「反骨のジャーナリストなんて変だ、ジャーナリストは反骨でなければならない」という言葉が紹介されていました。
あえてそのように発言せざるを得ない現状を憂えていたのでしょう。
ちなみに私は宮武外骨にも強く惹かれています。
patti
投稿: patti | 2019/12/10 08:54
Pattiさん
ありがとうございます。
黒崎正己氏の『桐生悠々、忖度ニッポンを嗤う』はまだ読んでいませんが、読んでみます。
むのたけじさんの言葉には共感しますね。
最近、湯島で行っているサロンでは、東京新聞の望月さんがよく話題になります。
望月さんの「新聞記者」を読んで、まったく何も感じなかったので、映画も見ていませんが、最近の報道界にはどうも信頼できる人が見当たりません。
投稿: 佐藤修 | 2019/12/12 18:11