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2019/12/24

■CWSサロン「時間意識と自殺予防〜都市でのつながりをどうつくるか」報告

「時間意識と自殺予防」をテーマにしたサロンは、20人を超えてしまいました。
「自殺」や「つながり」を「時間意識」と関係づけたところに、みんな関心を持ったのではないかと思います。
参加者が多かったうえに、初めての参加者も5人、しかも杉原さんの話も面白く長かったので、なんと予定を大幅に超えて3時間を超えるロングランサロンになりました。
にもかかわらず、まだまだ話したい気分が漂うサロンでした。

Sugihara20191220

杉原さんのお話を聞いて、参加者はたくさんの示唆をもらったと思います。
もちろん私もですが。
杉原さんの問題提起の話は、とても興味深いものがありました。
「時間」から考えていくと、「自殺」も「つながり」もちょっと違って見えてきます。

杉原さんの話は、日本の自殺の現状から始まりました。
そして、「多様なつながり」の喪失が、自殺多発社会の温床になっていること、その背景にあるのが日本人の「時間意識の変化」ではないかと、時間意識の話に入っていきました。

「日本人ほど時間をきっちり守る国民はいない」と、いまは海外の人たちから言われています。
しかし、幕末から明治初期にかけての日本人の時間意識はまったくそうではなかったことを、海外から日本に来た人たちが記録に残しています。
「日本人の悠長さといったら呆れるくらいだ」と書き残している人もいますし、「日本人は、一般に生活とか労働をたいへんのんきに考えているらしく、なにか珍しいものを見るためには、たちどころに大群衆が集まってくる!」とイギリス初代駐日総領事オールコックは書いているそうです。
この文化は今でも残っているような気もしますが。

杉原さんはさらに民俗学者の宮本常一が、日本の伝統的な農村では、「話も十分にできないような田植え方法は喜ばれなかった」と報告しているそうです。
西欧と日本の「時間意識」はまったく違っていたのです。

さらに時間を、春夏秋冬が回ってくる自然に象徴されるように円環イメージでとらえるか、近代西欧のように進歩主義を踏まえた直線イメージでとらえるかの違いも紹介してくれました。
そこには、「コミュニティの時間」と「個人の時間」、あるいは「身体の時間」と「時計の時間」という話もありました。

日本人の伝統的な時間意識を変えたのは明治維新で制度化された「学校」だと杉原さんは言います。
学校は日本人の「時間意識」を人間を均質な「労働力商品」に改革するための装置だったというのです。
これは前回の万葉集サロン番外編で話題になった「学校は文字を通して言語を均質化」する役割を担っていたのではないかという話とつながっています。

時間が直線になり、コミュニティから切り離されると「未来への不安」が生まれる。
自己責任社会になると同時に、「交換可能な存在」になった個人は「金銭依存」に向かっていく、と話は発展していくのですが、これ以上書くと報告が長くなるので、以下は省略。
関心のある人はぜひ杉原さんにコンタクトしてみてください。

杉原さんは、この後、ではどうしたら「時間意識」を変え、「つながり」を豊かにしていけるかを、いくつかの事例で紹介してくれました。
これもみんな示唆に富む話だったのですが、一つだけ紹介します。
それはただ「金銭離れ」するのではなく、「温かいお金」でつながりを豊かにしている「ヤギサワバル」の大谷さんの話です。

大谷さんは、西東京市の西武柳沢駅の近くでバルをやっています。
毎日の売上の1%を地域のために使うというのが経営方針だそうです。
さらにたとえ高くても地域のお店からビールなどを購入するのだそうです。
詳しくは下記サイトをご覧ください。
https://www.facebook.com/yagisawabar/
「「農家のビール」が都内で唯一飲める店 ヤギサワバル」という本も出ていますので、よかったら読んでください。https://www.amazon.co.jp/%E3%80%8C%E8%BE%B2%E5…/…/B07GVYD6LR

時間意識と自殺予防に関して、杉原さんは直接的には言及しませんでしたが、たくさんの示唆が込められていた話でした。
杉原さんは「「楽しい時間」を共有できる複数のコミュニティに所属すること」が自殺予防にもつながっていると考えているのです。
現在、さまざまな自殺予防対策が行われていますが、私たちの生き方から問い直すことが大切だと思っている私には、とても共感できる話でした。

最後に、杉原さんは、「自殺問題」ではなく「◯◯さんの問題」として考えていくことが大切だ、と言いました。
自殺問題に限らずに、昨今の障害者支援や高齢者支援、さらには子育て支援に関しても、通ずる話だと思います。

報告が長くなってしまい、話し合いの内容を紹介するスペースがなくなってしまいましたが、異論のぶつけ合いも含めて、話し合いも示唆に富むものでした。
「自殺」そのものに関する話し合いもありました。

ある参加者は、「いろいろな価値観があってよい」ということをハラに落とすことの重要性を感じましたと、手紙をくれました。
また、時間意識と自殺の関係という見方もあるんだと、とても勉強になりました、というメールももらいました。

視点を変えると、世界はまったく違って見えてくることがあります。
大きな意味での「コミュニティ」をテーマにしたサロンは、来年も継続する予定です。

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