■CWSサロン「5回目のサンティアゴ巡礼報告」報告
今年最後のテーマサロンは、昨年と同じく鈴木さんの巡礼サロンでした。
10人が参加しました。
今回、鈴木さんが歩いたのは「ポルトガルの道」。
これまでと違って、日本人にはほとんど会わなかったそうです・
鈴木さんの報告は、いつもそうなのですが、話し出すといろんなことを思い出すようで、話が止まりません。
ただ歩くだけの巡礼なのですが、それだけ密度の高い時間を過ごしてきているのでしょう。
そこに巡礼の価値が凝縮しているように思います。
今回も用意してきてくれたレジメの半分しか話がいきませんでした。
しかし巡礼の魅力や効用は、参加者にはしっかりと伝わったと思います。
鈴木さんは、まずサンティアゴ巡礼についての基本情報を話してくれました。
1970年代ごろから広がりだしたサンティアゴ巡礼は、1972年にはわずか67人だった巡礼者が昨年2018年には32万人を超えていて、さらなる増加が見込まれています。
つづいて鈴木さんは、巡礼の方法を紹介してくれました。
一番の課題は荷物の重さで、鈴木さんの場合は、4.7kgの身の回り品を入れたバックパックと貴重品類入りショルダーバックだったそうですが、それこそ100グラムの重さが巡礼の継続に大きな影響を与えることもあるそうです。
鈴木さんの場合、1日の歩行距離は15~40km、宿泊費用は5~15ユーロ(700~1900円)、食費費用は10~30ユーロ(1300~3800円)だったそうです。
最近は、スマホやイヤホンを使う人も多くなっているそうですが、鈴木さんはそういうものは一切使用しません。
道に迷っても、スマホで調べるようなことはせずに誰かに道を聞く。そういうことこそが、巡礼の魅力を高めると鈴木さんは考えています。
ついで、今回の「ポルトガルの道」で感じたこと、気づいたこと、自らが変わったことを話してくれました。
一つひとつに、興味深いエピソードや体験があって、話し出すと鈴木さんは時に目を潤ませたり、目を輝かせたりしていました。
いくつかを紹介します。
話しかけられとうれしい、でも話しかけるには少し勇気がいる、という鈴木さんの話には大きな示唆があるように思いました。
あいさつが人間関係のはじまり。ほんの少しの気遣い、ほんの少しの好意があればいい。
言葉がわからなくても心は通うという、非言語コミュニケーションも巡礼の醍醐味だと言います。
しかし、これらは巡礼でなくても当てはまるでしょう。
スマホが増えていることに鈴木さんはテクノロジーに支配される危険性を感じたと言いますが、これも昨今の私たちの日常に通じています。
鈴木さんは、今回改めて、巡礼とミニマリズム(簡素な暮らし)に繋がりを感じたと言います。
今回、その話もしてもらう予定でしたが、残念ながらあまりにもその前の話が面白く、そこにたどり着きませんでした。
しかし、鈴木さんの数々の体験談から、その真意は伝わってきました。
さらにレジメでは「これからの人生を巡礼者のように生きる」という鈴木さんの思いに通ずる示唆に富む言葉も紹介されていました。
鈴木さんの話に触発されて、いろんな話題で話し合いが行われました。
参加者に長年長距離ランニングをされている人がいて、その人から「歩く」と「走る」の関係が話題に出されました。
これもなかなか面白い話題でした。
巡礼中には挨拶や話しかけが自然と出てくるのに、最近の都会人は「挨拶」や「話しかけ」がなくても生きていける。とても興味深い話です。
巡礼者が同宿者のために食事づくりをして、同宿者みんなでコミュニティディナーをする体験もしたそうです
巡礼の醍醐味の一つは、もしかしたら「食事」かもしれないと思いました。
参加者はそれぞれにいろんな気付きをもらったはずです。
ところで、レジメの最後にこういう文章が書かれていました。
巡礼はコミュニティを生み出します。
他者を受け入れるコミュニティを。
他の人がどう旅路を歩いているかに興味を持つコミュニティを。
お互いに与え、受けるコミュニティを。
以前、鈴木さんが偶然に立ち寄ったスペインの小さな教会に置かれていた「El Camino(巡礼)」という文書からの引用だそうです。
これは湯島のサロンが目指していることでもあります。
来年は、それぞれのコミュニティを話し合うサロンを開きたいと思います。
来年もまた年末に鈴木さんの巡礼サロンがあるかもしれません。
いや他の人の巡礼サロンかもしれませんが、巡礼のテーマは引き続き、湯島の話題にしていきたいと思います。
どなたか自分の巡礼報告をされたい方はご連絡ください。
もちろんサンティアゴに限りません。
その気になれば、いろんなところに「巡礼路」はありますから。
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