■熊沢さん家族に教えられたこと
元農水省事務次官の熊沢英昭さんが自宅で44歳の長男を殺害した事件の裁判はたくさんのことを考えさせてくれました。
同時にしかし、これほど気の重くなる事件もありません。
判決は実刑6年でした。
これをとやかく言う気にはなれませんが、関係者はみんな不幸だったと思います。
とても悲しくてさびしくて、やり切れません。
せめてテレビではいじくりまわしてほしくないと思いますが、いじくりまわしやすい事件なのでしょう。
しかも誰もが、身近に感じられる事件とも言えるでしょう。
だからみんな生々しい意見を持ってしまうのです。
この事件や判決へのコメントを聞いていると、発言者のこれまでの人生やいまの生活が垣間見える気がします。
そしてみんな同じように悲しくさびしく生きているような気がしてなりません。
この事件は、人の生き方を問いかけているのです。
もちろん私も問われている一人です。
愛する人に殺されるのと愛する人を殺すのとどちらがつらいでしょうか。
もちろん後者でしょう。
しかし、愛する人に殺させないために殺すという論理も成り立ちます。
ですから、この問いはまったく意味をなさない気もします。
殺すのも殺されるのも同じことなのであれば、怒りの持って行き場はありません。
でもちょっとだけ世界を広げれば、事態の見え方は一変します。
一番の問題は、熊沢家族が閉じられた小さな世界に生きていたことかもしれません。
もう少し広い世界に思いを馳せられれば、事態は変わったかもしれません。
私たちは現在、情報化のおかげで、一見、広い世界に生きているように思いがちです。
しかし、実際にはとてもとても小さな世界に生きているのではないか。
今回の事件と裁判は、私にそんなことを改めて気づかせてくれました。
テレビでは、事務次官まで勤め上げた人が、と言われることがありますが、たぶん事務次官まで勤め上げた人だからこその世界の狭さ、知性の欠如だったのかもしれません。
学校で学べば学ぶほど、世界は狭くなる。
それが私のこの数十年の体験からの結論です。
いまの教育は「知性」や思考力を奪う仕組みではないか。
そんな気がしてなりません。
熊沢さん家族から教えてもらったことを、少しでも活かしていければと思います。
やはり湯島のサロンは、趣旨が理解されなくても続けようと思います。
熊沢さんにとって、実刑だろうと執行猶予だろうと、たぶん瑣末の話でしょう。
むしろ熊沢さんと奥さんが、自らの生命を断つことが心配です。
熊沢英昭さんはじめ、熊沢さん家族の心の平安がおとずれることを深く祈ります。
私はおふたりには面識はありませんが、どなたかがきっと支えてくれることを信じています。
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