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2020/01/20

■第5回リンカーンクラブ研究会「議会制の虚構性」報告

第5回リンカーンクラブ研究会は「議会制の虚構性」をテーマにしました。

議会制は、本来デモクラシー(民主制)とは無縁だったにもかかわらず、選挙権の拡大に伴ってイギリスでデモクラシーとつながってきた制度ですが、当時、ルソーが「彼ら(イギリスの人たち)が自由なのは議員を選挙する間だけのことで、議員が選ばれるやいなや、イギリス人民は奴隷となり、無に帰してしまう」と指摘しているように、偽装民主主義という指摘は少なくありません。
しかし、ルソーの予想に反して、議会制は民主制の象徴のようになってきています。
特に日本では、「議会制民主主義」という言葉もあるように、議会がデモクラシーの象徴と捉えられてきましたが、最近はさすがにその機能不全が露呈しだし、それが政治不信や投票率低下につながってきています。

リンカーンクラブの武田さんは「議会制民主主義は民主主義なのか」とずっと主張してきています。
最近の議会の実態を見れば、その虚構性は明らかであり、それによって憲法さえも無視した政治が可能になってきているにもかかわらず、なお日本は「民主政治」が行われているとみんなが思っていることに武田さんはいらだちを感じているようです。
ただ武田さんは、いらだって批判するだけではなく(もちろん諦めるのではなく)、どうしたら少しでも民主主義の理念に近づけられるかを考え、社会に発信してきています。

今回は、同じようにそういう思いを持った人たちが8人集まりました。
考えは必ずしも同じではないのですが、現在の政治に危機感を持っていることに関しては同じです。

202001
議会制が民主主義の虚構ならば、その虚構を正すためにどうやって民主主義に近づけていくか、それが今回のテーマです。
武田さんの最初の提案は、国会議員選挙の際に、首相の信任投票を加えたらどうかということでした。
非常に示唆に富む提案ですが、賛否両論あって、議論は最初から白熱しました。

つづいて、予算も国民投票で決められないかという提案。
これも白熱しましたが、予算と政策の関係の議論やら、政治の安定性(行政の継続性)などで議論が分かれました。
重要法案も国民の意思表明ができるようにしたらどうかという提案もありました。

こうした議論をしていると、抽象的な政治談議からは見えてこないいろんなことが見えてきて、政治と生活のつながりもわかってきます。
時にはちょっと険悪な空気が出てくになるほどの異論反論が噴出するのが湯島のサロンの面白さです。

制度よりも国民の意識が問題ではないかという議論も出ました。
制度をいくら変えても意識が変わらなければ何も変わらないかもしれません。
しかし、制度と意識は深くつながっていますから、やはり制度は大切です。

「民意」とか「民度」などという多義的で意味不明な「お上の言葉」は使うべきではないというのが、私の考えですので、ちょっとそこにこだわってしまい、「民意」論争もありました。
私は、誰かが勝手に決めてしまうような民意とかにはあんまり興味はなく、私自身の生活が豊かになればいいと思っている人間で、そのためにこそ政治があると思っていますので、選挙には必ず行きますし、政治への関心は強いです。
むしろ、私のために政治があると思うことこそが、大切だと思っています。
誤解されるといけませんが、宮沢賢治が言っていたように、「みんなが幸せにならないと自分の幸せもない」と思っています。

武田さんからは、有識者会議のようなものをつくり、国会審議を評価する話し合いの場をつくったらどうかという提案もありました。
みんなほぼ賛成でしたが、どういう人を選ぶのかでは議論はまったく分かれました。
私はむしろ「無識者会議」の方がいいのではないかと思います。
また、投票制度に関しても、武田さんは「重投票と軽投票」という提案をしましたが、議会制度の虚構性を解消していくためにはさまざまなことが考えられます。

しかし議論しているだけでは何も始まりません。
どうしたら議会制を民主主義に近づけていけるかの実践に取り組まないといけないとの指摘もありました。
その通りで、実践に取り組まなければ、世間の「有識者」たちと同じように体制に寄生的な存在に終わりかねません。

結局は、まずは投票率を高めることではないか、ということになり、前回、提案された「選挙投票は国民の責務(公務)と捉え、投票行為にきちんと対価を払うべきではないか」ということを軸に、投票率を高める活動に取り組むべきではないかということになりました(私の勘違いかもしれませんが)。
ともかく、そういう活動を立ち上げていきたいと思いますが、共感して一緒にやりたいという方がいたらご連絡ください。

3時間を過ぎても議論は止まりませんでした。
寒い休日にもかかわらず、わざわざ湯島まで出かけてきて、こんなに真剣に語り合っている人たちがいることに、私は感激して議論に参加していました。
現政権批判や傍観者的な諦観的な発言をフェイスブックで見るたびに、あなたたちが日本の政治をダメにしていると思うのですが、熱い議論をしている人たちもいることに救いを感じます。

次回は、2月22日、「民主主義政治と合意形成」がテーマです。
いまの政治に満足していない人はぜひご参加ください。

 

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