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2020/01/16

■CWSサロン「知識ゼロで挑む無門関」報告

「無門関(むもんかん)」のサロンは、参加申込者が少なくていささか心配していたのですが、直前に申し込みがどんどん増えて、ふたを開けたらなんと20人近い参加者になりました。
とりあげたのは、無門関第二則の「百丈野狐」。
話題提供者の金子英之さん(「無門関」永世愛読者/i2 associates代表)が「知識ゼロ」でも大丈夫と言ってくれたので、「無門関」の名前も知らなかった人も参加してくれましたが、事前に「百丈野狐」は読んできてもらいました。

Mumonkan20200113
「無門関」は中国南宋時代の禅僧 無門慧開によって編まれた、門下の修行僧を悟りに導くための問題集(公案集)です。
48ある公案の2番目にでてくるのが「百丈野狐」。
話の大筋は、百丈禅師のところに老人がやってきて、自分は以前僧侶だった。修行したら因果の世界から抜けられるかと問われて、「不落因果」、因果の世界から脱けられると応えて、野狐の身に落とされたが救ってほしいと頼まれます。そして、百丈に自分が問われたのと同じ問いを投げかけます。百丈はそれに「不昧因果」、因果の世界に身を任せ、と応じます。それを聞いた老人は一瞬に悟り、野狐の身を脱したという話です。
そしてその後に、百丈の弟子たちや高弟の黄檗とのやりとりがあります。
この話から何を得るか、が公案の問いです。
ざっと読めば、老人は「不落因果」と答えてなぜ野狐の身に堕ち、「不昧因果」と聞いてなぜ野狐の身を脱する事が出来たのか、というわけです。
ちなみに、「百丈野狐」の全文は、たとえば次のサイトにも紹介されていますので、関心のある人はお読みください。
https://k1s.hatenablog.com/entry/20120614

話に入る前に金子さんは3つの視点をお話になりました。
まず金子さんは「表現者」と自己紹介した上で、イコノグラフィ(図像学)を専攻されていたことをお話になりました。
図像学は、絵画・彫刻などの美術表現の表す意味やその由来などについての研究する学問です。
ついで、金子さんは「問題には解がある」と言い、解があれば見つけたい、それもテキストだけからの正解に至りたいとお話になりました。
そしてこの公案には、推理小説によくあるような、真実から目を反らさせるトリックが仕組まれている。そこで、公案に秘められた「正解隠し」を見つけるために、「構造主義」の発想を利用して、文章を解析し、問題を整理したと話してくれました。
いずれも、それぞれに興味ある話ですが、今回はともかく、公案を解くことがテーマです。

さて本題です。
金子さんは、小道具まで用意してきてくれて、「百丈野狐」についてまずは紹介してくれ、この公案(問題)を構造的に図解してくれました。
そうした話をしながら、参加者からも自らの解釈や疑問点などをいろいろと引き出していきました。
その内容は、「ネタ晴らし」になりますので、この報告では一切触れません。
しかし、参加者からの発言も含めて、とても興味深く、示唆に富む話し合いがあったと思います。
そうした思考を引き出すところにこそ、公案の意義があるのかもしれません。
だとしたら、現在の社会にとって、こうした公案に立ち向かう価値は極めて大きいように思います。
金子さんはこの話をあるビジネススクールでも毎年講義されていました。
その時の反応もお聞きしましたが、こういう話が行われるビジネススクールが存在していたことに私はとても感動しました。

こうした禅問答にどんな効用があるのかという質問もありましたが、そういう質問が出る時代だからこそ、大きな効用があるのかもしれません。
話し合いのいくつかは、紹介したい気もしますが、たぶん不正確な紹介になるのでやめさせてもらいます。
ただ、終わった後、参加者からこんなメールが来ました。

せっかくいい方向に話が向かいそうなのに黄蘗が百丈和尚の横っ面をぶんなぐったところになると、どっちか偉いとか上だとかとたんに「執着」に固執するのが可笑しかった。

私もその時に同じ思いを感じていましたが、この公案は、「不落師弟・不昧師弟」をたしなめているようにも思いました。
金子さんもお話になっていましたが、そこにあるのは極めて根底的なメッセージなのです。
しかし、それを論理的に解釈し、正解を得ようとする金子さんご自身にも大きな興味を持ちました。

金子さんは無人島に流されたとしてもこの一冊があれば退屈しないと言われました。
それほど金子さんは「無門関」にはまっているようです。
それほどの魅力があるのであれば、私ももう少ししっかりと読んでみたくなりました。
そこで改めて、無門関の48の公案のどれかを選んで、みんなで読んでみるサロンを企画しようと思いつきました。
またご案内させてもらいます(たぶん)。

もし皆さんの中に、この公案を読んでみたいという方がいたら、ご連絡ください。
採用されるとは限りませんが。

 

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