■湯島サロン「アクチュアルな仏教実践-インド仏教とダリット」報告
カースト制度がまだ社会全体を覆っているインドで、人々の平等を目指す仏教の復興に取り組んでいる佐々井秀嶺上人の随身として活動している亀井竜亀師が開いてくれた緊急サロンには、直前の案内にもかかわらず、たくさんの人が参加してくれました。
今回のサロンを企画してくださった荒金さんがファシリテーター役になって、亀井さんからなぜこうした活動にかかわることになったかも含めて、現在のインドでのアクチュアルな仏教実践の話、そして今後の活動の予定や未来への課題を話してしてもらったうえで、いつものような「対話」するサロンになりました。
仏教はインド地方で始まったにもかかわらず、現在のインドの人たちの多くはヒンズー教徒で、いまもなおカーストの枠外に置かれた被差別カースト(ダリット)が存在しています。
そうした状況を変えていこうと活動していたのが、ガンジーと並んでインド独立に取り組んだアンベードカルですが、自らもダリットの出自であったアンベードカルが起こしたインド仏教(新仏教)復興の活動を継承したのが佐々井秀嶺上人です。
案内文にも書きましたが、日本でその活動を支援しているのが「南天会」です。
詳しくはそのサイトをご覧ください。
https://www.nantenkai.org/
亀井さんは、日本で仏教とは関係のないお仕事をされていましたが、たまたま佐々井上人との縁ができ、身近で接しているうちに、佐々井上人の笑顔に魅了されて得度されたそうです。
亀井さんは「ジャイビーム!」という言葉で話を始めました。
「ジャイビーム」は「心が通じ合う」というような意味を持った、インド仏教徒同士の挨拶の言葉だそうです。
亀井さんの話は、知識ベースの話ではなく、すべて心身で体得した話でしたので、素直に心に伝わってきました。
その話は私が間接的に報告しても伝わらないと思いますので、関心のある人は当日のサロンの動画が公開されるようになったらご案内しますのでご連絡ください。
亀井さんの人柄も伝わってきますので。
亀井さんによれば、インド仏教(新仏教)は一言で言えば、ダリッド(抑圧された人たち)に寄り添いながら、カーストの否定を目指した「怒り」を込めて闘う宗教で、一言で表現すれば「炎」がふさわしいと言います。
ここにアンベードカルが始めた「インド仏教」のすべてが象徴されています。
こうした「インド仏教(新仏教)」とそれまでの仏教(たとえば日本の宗派仏教)とは、つながっているとはいえ、かなり違います。
あえて「インド仏教」とここでは書いていますが、「新仏教」とか「インド仏教復興運動」と呼ばれることもあります。
インドには古来からの仏教も存在し、最近では日本の宗派仏教の布教活動も広がっているそうですが、佐々井上人はそうした仏教のあり方にも批判的です。
その意味では、まさに現在の仏教に対する「新仏教運動」でもあるわけです。
おそらく釈迦が始めたときの仏教も、同じように社会に対して激しい思いのこもった「運動」だったのでしょう。
そこに「宗教」というものを考える大きな示唆があるように思います。
社会を変える宗教と社会を保守(秩序管理)する宗教があると言ってもいいかもしれません。
インド仏教への改宗式では、三帰依(仏・法・僧への帰依)と五戒(不殺生などの5つの戒律)、そして22の誓いが与えられます。
それによって、ヒンズー教的生き方を否定し、仏教徒としての生き方を誓うわけです。
亀井さんが、寄り添いながら戦うと話したように、インド仏教の目指すところは、ヒンズー教の否定であり、カーストを超えて、すべての人が同じ人間になることなのです。
インドで生きていくことはヒンズー社会の枠の中で生きていくということだと言われますが、まさにインド社会はヒンズーイズムで構成されています。
インドではカーストに対応したアファーマティブ・アクション(バリッドに対する差別優遇措置)があり、ヒンズー教徒であるほうが社会的な支援を得られるという面もあるため、「隠れ仏教徒」も多いそうです。
ちなみに、政府統計では、仏教徒は1%前後とされていますが、実際にはそれ以上の仏教徒がいるといわれています。
政治と宗教、さらには生活と宗教を考える上での示唆を感じます。
日本にはたくさんの僧侶がいるのに、街中では僧侶の服装をした人になかなか出会わないという亀井さんの問いかけもまた、多くのことを考えさせられました。
私はサロンの翌日から3日間、京都の社寺をずっと回っていましたが(そのため報告が遅れました)、亀井さんの話を思い出しながら回っていたせいか、いつもとは違ったものを感じました。
宗教はまた経済ともつながっています。
今回、サロンを企画してくれた荒金さんは、これを機会に、改めて自身が抱えている「差別」「格差」「平等性」「非人間性」などを問い質してみませんかと呼びかけてくれましたが、そうしたことに関しても、たくさんの示唆がありました。
私自身の気づきが多すぎてまだ十分に消化できていないので、これ以上書けませんが。
サロンではもっと具体的な話し合いがあったのですが、すべて省略してしまいました。
フォローしてくださる方がいるとうれしいです。
このサロンを契機にして、湯島でも宗教や信仰をテーマにしたサロンを企画していきたいと思っています。
話をしたいという方がいたら、ぜひご連絡ください。
南天会ではインド仏教の支援活動を行っていますので、共感してもらえたら支援してください。
また佐々井上人の活動の一部を紹介した動画も公開されていますので、ぜひご覧ください。
https://youtu.be/gqgYJtMMupg
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