■第6回リンカーンクラブ研究会「民主主義政治と合意形成」報告
今回は「民主主義政治と合意形成」がテーマでした。
新型コロナウイルス感染症が広がっているなかを、こういうテーマで10人も参加者があったのがうれしかったです。
昨今の感染症の報道状況や社会の反応を見ていると、いまこそ「政治」を語ることの大切さを感じています。
それはともかく、今回はまず武田さんが「合意形成に関するさまざまな視点や課題」について、視点を整理してくれました。
つづいて沖さんも「合意形成のメカニズム」を、公共哲学や紛争解決などにまで視野を広げて、課題の整理をしてくれました。
そしていつものような話し合いと混乱と何となくの「寛容な合意」。
武田さんは、思ってもいなかったことから話しだしました。
合意を求める行為は足し算〈不等式〉に似ているかもしれないと言うのです。
これを文字で説明するのは面倒ですが、簡単に紹介します。
サロンの常連だった太田さんは、2つのリンゴと3つのミカンを見せられて、全部でいくつか、と小学校の時に先生に訊かれて、そのまま、2つのリンゴと3つのミカンですと答えたそうですが、別の同級生は、全部で5つですと答えて褒められたそうです。
この話は、湯島のサロンでは時々話題にでます。
この話を材料に、武田さんは、リンゴとミカンの概念を外して抽象化すると計算が可能になると言います。
つまり、リンゴとミカンの共通項を対象に捉え直し、たとえば果物はいくつかと問われれば太田さんも5つと答えたでしょう。
合意形成とは、要は対象を因数分解して、その共通項を合意していくことではないかというのです。
こうしたことを数式を使って、武田さんは解説してくれました。
とても分かりやすい話で、そこから政治における合意形成の話が広がるはずです。
選挙とは、人間の数値化でもあると武田さんは言いました。
政治学では、複数性というのがキーワードの一つですが(これは2月29日のアレントのサロンで話題になるかもしれません)、これからの社会を考える上でも大切なキーワードです。
次に武田さんは、合意形成の結果のパターンを説明しました。
多数決は一番多数の意見を、合意と見なす形です。
徹底的に話し合って、一つの意見にまとめる方法もあります。
お互いの違いを明確にして、共通する部分を合意とするパターンもありますし、違いを理解し合う “agree to disagree”というパターンもあります。
話し合いで、それぞれの考えとは別の、新しい考えを創発する方法もあります。
これも政治における合意とは何かを考える上でとても示唆に富む話です。
こうした視点や課題を武田さんや沖さんは出してくれたのですが、そのまま話し合いに進めばよかったのですが、政治における合意と生活における合意とは違うのではないかというような話が出てきて、いつものように議論はなかなか収斂に向かいませんでした。
しかしまあ、これが勉強会ではない湯島のサロンの特徴なのです。
話し合いの中からそれぞれがいろんな気付きを得ることが最優先ですので。
私は、合意という概念が出てきたのは、他者と自我を峻別できるようになり、人権概念が出てきた近代になってからだろうと思います。
そして近代政治の基軸にあるのは、「合意形成」だと今回改めて気づきましたので、武田さんに頼んで、このテーマをまたやりたいと思っています。
今回は議論の入り口で終わったような気がして、ちょっと物足りません。
武田さんを説得できれば、次回もこのテーマで行きたいと思っています。
他の魅力的なテーマが出てくれば別ですが。
| 固定リンク
「サロン報告」カテゴリの記事
- ■湯島サロン「サンティアゴ巡礼に行きました」報告(2024.09.06)
- ■湯島サロン「『社会心理学講義』を読み解く②」報告(2024.09.03)
- ■近藤サロン②「ドーキンスの道具箱から人間社会の背後にある駆動原理を考える」報告(2024.08.29)
- ■第2回あすあびサロンは我孫子の撮影シーンが主な話題になりました(2024.08.24)
- ■第34回万葉集サロン「巻1-5~6の「軍王」の歌」報告(2024.08.13)
コメント