■コムケアサロン「〈当事者支援者〉の現状と課題、そして今後」報告
14人の参加者があり、このテーマへの関心の高さを改めて感じました。
前日の政治関連のサロンは全員が男性でしたが、今回はむしろ女性が多かったのも印象的でした。そこにも現在の社会のひずみを感じます。
最近は、支援の考え方も大きく変化してきています。
「わたし支援する人、あなた支援される人」というように、支援を一方向的に捉えるのではなく、相互に「支援し支援される関係」として捉えるようになってきています。
コムケア活動は、最初の選考会でも申し上げたのですが、ケアとはそれによって自らも成長していくことだという、ミルトン・メイヤロフの「ケアの本質」のメッセージを理念としています。
しかし、その考えはまだまだ「理念」の世界にとどまっているようにも思えます。
今回のテーマ〈当事者支援者〉は、そうした現状を象徴していると同時に、そうした状況をどうやって越えていくかという大きなメッセージが込められています。
つまり、理念的であると同時に、きわめて現実的なテーマであり、個別的であるとともに、普遍的なテーマです。
サロンは、実際に〈当事者支援者〉を名乗って活動している下さんが、実践を通して考えてきたことを参加者に問いかけることから始まりました。
そして、長年、発達障害の当事者としてさまざまな活動に取り組んできている冠地さんが、ファシリテートする形で参加者との議論を深めるような形で進められました。
下さんはまず、〈当事者支援者〉と言えるには3つの条件が必要ではないかと問いかけました。
・病気や障害などの困難な状況を経験したが、いまは生活者として最低限の回復をしていること
・体験や工夫を支援ツールとして活用できること
・支援者としての求められることを果たせること
話し合いはここから入りました。
当然ながら、「当事者」とはなにか、「支援」とはなにか、「生活者」とはなにかということが話題になりました。
つづいて、〈当事者支援者〉のリスク(気をつけなければいけないこと)と強み(当事者であればこそできること)が話題になりました。
そして、ピアサポーターとの関係や当事者開示に関する話し合いへと広がっていきました。さまざまな立場の人が参加していましたので、さまざまな視点からの事例の紹介や問題指摘、あるいは質問などが出されました。
〈当事者支援者〉という言葉や活動も、すでにいろんな形で広がっていますが、ともすると私たちは、〈当事者支援者〉と〈ピアサポーター〉を同じように捉えてしまいがちです。
しかし、その渦中にいる下さんや冠地さんにとっては、両者は全く違うものなのです。
支援の深さの違いぐらいにしか理解していない人も多いと思いますが、冠地さんの説明で、それらが全く異質なものであることを、今回私も気づかせてもらいました。
私が一番印象的だったのは、支援活動における「障害者の権利主張」という話でした。
〈当事者支援者〉と〈ピアサポーター〉の違いのポイントがそこにあるのかもしれません。
下さんの提案や話し合いの内容に関しては、私には十分に紹介する能力がありませんので、下さんの報告(フェイスブックで少し紹介されています)に任せたいですが、私の感想を書いておきます。
下さんや冠地さんは、プロの仕事としての〈当事者支援職〉の確立を目指しています。
そしてそうした取り組みを通して、日本の「支援」活動はもちろん、社会のあり方を変えていきたいと考えています。
そのビジョンにはとても共感しますが、そのためには、「当事者が支援活動をすること」の意味をしっかりと社会がシェアしていくことが大切ではないかと思いました。
同時に、「支援」の仕方はさまざまで、それらは上下関係にあるわけではなく、さまざまな支援のあり方が支え合い、補うことが社会を豊かにしていくという認識も、社会でシェアしていく必要があると思いました。
この点は冠地さんが繰り返し話してくれていました。
メイヤロフの言っている通り、支援活動を通して当事者も「支援」されるとすれば、〈当事者支援者〉という概念を広げていくことで、「当事者」とか「支援者」といった概念はなくなっていくかもしれません。
それは同時に、「支援」の質を高めていくことであり、さらに言えば、個別問題の解決を超えて、社会のあり方を変えていくことにつながるかもしれません。
一挙に話を大きくしてしまいましたが、冠地さんと下さんが目指しているのは、そうした大きな社会変革の話ではないかと思いました。
そうであれば、1回だけのサロンでは問題の存在を少しだけシェアしただけで終わってしまいかねません。
そうならないためには、この問題は湯島のサロンでも継続的に取り上げていきたいと思いました。
今回のサロンでは、下さんは自らの考えを出しながら、参加者との話し合いや冠地さんとのやり取りを通して、〈当事者支援者〉構想とその実践計画を深化させていっていたように思いますが、そうした場をこれからもまた開いてもらおうと思います。
また、下さんとは別に、大きな意味で〈当事者支援者〉構想につながっていくようなテーマのサロンを、コムケアサロンとして企画していきたいと思います。
問題の所在を知ってしまったら、それぞれにできることに取り組むことが、コムケアの精神ですので。
下さん、冠地さん
内容に関する報告や呼びかけがあれば、フォローしていただければうれしいです。
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