■湯島サロン「なぜウイルスは感染症を起こすのか」報告
新型コロナウイルス感染症が広がりだしているなかのサロンでしたが、10人が参加しました。
テーマは「なぜウイルスは感染症を起こすのか」。
講師役は細菌学者の益田昭吾さん(慈恵医大名誉教授)です。
私のような全くの素人の質問にもわかりやすく答えてくれながら、益田さんはていねいに話をしてくれました。
いま拡散中の新型コロナウイルス感染症のことを考えながらお聞きしましたが、テレビでもこういう話をしてほしいなと思いました。
そもそも「ウイルス」とは何かも知らずに、過剰に不安をもったり過剰に楽観したりしている人が少なくないでしょうが、こういう話を聞くとちょっと落ち着きます。
益田さんは最初に「検疫」というのは、14世紀のペスト大流行の時に、疫病がオリエントから来た船から広がることに気づいたヴェネツィア共和国が、船内に感染者がいないことを確認するため、40日間、隔離停泊させていたことから始まったと説明してくれました。
検疫(quarantine)の語源は、ヴェネツィア方言の「40日間」の意味だそうです。
疫病の潜伏期間は40日間とされていたわけです。
新型ウイルスが問題となったクルーザーの検疫期間は何日だったでしょうか。
こうしたところにも、ウイルスが広がりやすくなっている状況があると益田さんは示唆してくれました。
つづいてウイルスのイメージをわかりやすく説明してくれました。
ウイルスは、地球の最後の日に宇宙に向かって飛び立った宇宙船のようなものだというのです。
永遠に宇宙を飛行していけるわけにはいかないので、早く自らが落ち着ける惑星を探しているというのです。
最近、居場所の問題に取り組んでいる私は、一気にウイルスに親近感を持ってしまいました。
ウイルスにも「居場所」が必要なのです。
なんとかしてやらなければいけません。
そこから「環境とウイルス」「宿主とウイルス」の話になりました。
そして、話はどんどんと深くなっていくのですが、私の理解力不足のために正確に報告する自信がありません。
思いだせるキーワードを紹介すれば、「ウイルスと環境」「常在性と病原性」「常在性のない生物は生き残れない」「ウイルスの増殖志向と経済成長主義」「免疫」「自己非自己」「自己寛容」「免疫」とまあ、そんな話をしてくれました。
とりわけ私が興味を持ったのは「常在性と病原性」です。
私たちの社会のあり方を考える上で、とても大きなヒントがあるような気がしました。
益田さんはウイルスの世界と私たち人間の世界を比べたくなる誘惑にかられてしまうというようなことを何回か口にし、その都度、興味ある示唆を与えてくれました。
益田さんはこれまでのサロンでも「病原体の生態を比喩として考えると、人間や社会が見えてくる」と話してくれていますが、そこは学者なのでいつも控え目に語ります。
そのあたりを思い切り語ってもらうサロンもいいかもしれません。
理解不足のまま、これ以上、報告を書き続けると益田さんに迷惑を与えかねないので、このあたりでやめます。
新型コロナウイルス感染症に関しても、いろんな知見や感想を語ってくれましたが、これも中途半端な紹介はやめます。
今回お話をお聞きして、益田さんの「連続病原体講座」を企画したくなりました。
益田さんが引き受けてくれればですが。
病原体から学ぶことはたくさんありそうです。
ちなみに、益田さんには、そうしたことをわかりやすく書いた小説『看子の日記』(未出版)があります。
ご関心のある方はご連絡ください。
まだ未定稿のようですが、お読みになって感想を送ってもらえるならば、益田さんの了解を得てデータで送らせてもらいます
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