■コロナ危機が可視化してくれた3つの岐路
今回の新型コロナウイルスのパンデミック(コロナ危機)は一過性の危機ではなく、これによって、社会は大きく変わっていくだろうと言われています。
何がどう変わるかに関しても、さまざまな指摘が行われていますが、私なりに少し考えてみたいと思います。
コロナ危機は私たちにとってのいくつかの「岐路」を可視化してくれているような気がしますが、いまここで、どの道を選ぶかで、これからの社会の方向が決まっていくはずです。
それは、決して他人事ではないばかりか、自らの人生にもつながってきますし、ひとりの行動が社会を変えていくことにつながっていくかもしれません。
ただ単に「コロナ危機」を乗り越えた、で終わるのではなく、この「危機」を契機にして、未来を良いものに変えていくことができれば、いまの苦労も報われます。
ではどういう岐路に立っているのか。
第1の岐路は、「取り合いか分かち合いか」です。
これまでの経済や社会の基調は「取り合い」でした。
政治は利益の配分でしたし、経済は利益の取り合いでした。
今回のコロナ騒ぎでも、まさにそうした動きがさまざまなところに見えています。
しかし、その一方で、支え合う政治や分かち合う経済の動きも広がっています。
たとえば、経済でいえば、市場を中心としたマネタリーエコノミー(資本主義経済)は依然、支配的ではありますが、生活(コモンズ)を中心としたソーシャルエコノミーへの動きも静かに広がりだしています。これまでの経済観に囚われているとそうした動きはなかなか見えてきませんが、コロナ危機は、そうした動きを可視化し、加速しているように思います。
経済の枠組みそのものが大きく変わりだしてきているのです。
第2の岐路は、「自由か安全か」です。
リベラル・デモクラシーの矛盾が顕在化し、民主主義か自由主義かという選択においては、少なくとも欧米や日本では、自由主義へと重心が向いていました。
そのため「民主主義の危機」が叫ばれてきています。
しかし、それと合わせて、「リスク社会」化を背景に、「自由か安全か」が大きな問題になってきています。
民主主義か自由主義か、と、自由か安全かは、深くつながっています。
コロナ危機状況の中で、日本では、多くの人が、自由よりも安全を選択していますが、その安全が将来的には不安全を内包していることにはあまり意識が向いていません。
また、民主主義や自由にどう影響を与えるかも、あまり考えられているとは思えません。
この問題は、さらに、「同調か自律か」という第3の岐路につながっています。
民主主義を「個人の尊重」ととらえれば、その基本には「自分で考える」個人という主体的な存在が不可欠ですが、少なくとも最近の日本においては、「自分で考える」ことは生きにくさにつながってきています。
組織の中で「自分の考え」にこだわっていると、うまくいかず、最悪の場合は死に追いやられます。
そこまでいかなくとも、自分を殺して組織のために行動することが多くの人の生きる基準になってしまっています。
組織の力と個人の力ではいまや勝負にならない関係になってしまっています。
そのために、自分で考えることが人間である条件だと思っている私には、いまや日本から人間がどんどん消えてきていると思っていますが、もしかしたらコロナ危機がそれを反転させてくれるかもしれないと根拠もなしに思い出しています。
なぜなら、結局、自分でしっかりと考えていかないと安全は守れないことにみんな気づくのではないかと思うからです。
コラテラル・ダメッジがはびこる組織では、個人の安全は本来は守られないのです。
ほかにもいろいろな岐路があります。
小さな国家か大きな国家か、あるいはグローバリゼーションのスタイル。
ソーシャルディスタンスに象徴される、人間の関係性に関する岐路。
いろいろあります。
新型コロナウイルスが恐ろしいのではありません。
それにどう対処するかが大切なのです。
対処の仕様では恐ろしい状況を生み出しますが、私たちの未来にとって、幸いをもたらしてくれるかもしれません。
恐ろしがってばかりいるのでは、未来は開けてきません。
このシリーズはブログで少し書き続けようと思います。
5月にはこれをテーマにサロンもやりたいと思っています。
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