■湯島サロン「貸借対照表による経済活動の分析」報告
沖さん主催の「貸借対照表による経済活動の分析」は10人を超すにぎやかなサロンになりました。高校生の初参加もありました。
財政会計、自治体会計、企業会計、家計は、それぞれ目的が違うために会計制度が違っています。しかし、金銭経済という視点で考えれば、それはすべてつながっています。そこで、それらを総合的に捉えることで、これまで見えなかったものが見えてくるのではないかというのが沖さんの考えです。
そこで、企業会計のフォーマットを、個人(家計)や企業、政府(財政)にも展開して、国家全体の金銭の流れや富の全体像を捉えてみようということで、まずは企業会計の基本である貸借対照表と損益計算表の説明から始まりました。高校生もいたので、減価償却とか日常語ではない用語も参加者が補足的に解説しあってくれました。
個人、会社(事業体)、政府という3つの層で作成した貸借対照表を総合すれば国家全体の金銭経済の全体像が把握できるのではないかというのが沖さんの提案です。
20~30年前に日本でも金融ビッグバンが起こり、企業会計もグローバルスタンダードに移行しました。その結果、日本型の金融制度は解体され、日本の企業構造は大きく変わり、経済の質も変化しました。
並行して、英米発の「ニューパブリック・マネジメント」といわれる行政革命が日本でも広がり、自治体会計制度もかなり企業会計に近づきました。しかし国家財政に関しては、相変わらず特殊構造が維持され、ブラックボックスはそのままで、上場企業程度の透明性も得られてはいないばかりか、わからないことが多すぎます。
たとえば財政赤字がよく話題になりますが、債権と債務は国家単位で考えればバランスしているのだから心配ないという議論もありますが、ほんとうにそうなのか。
などなど、こうした問題を抽出するためにも、貸借対照表による経済活動の分析は有効ではないかというわけです。
今回は考え方の提示だけだったので、具体的な議論にはいきませんでしたが、それでもいろんな課題は見えたと思います。通貨の話や金融の話(特に利子の意味)も少し出ました。沖さんが、冒頭金銭では計れない「幸福」ということもあるという話をしたので、GNP(国内総生産)とは別のGNW(国民総福祉)の話も出ました。
経済はもともと「経世済民」だったし、日本には近江商人の三方良しの伝統もあるという話まで出ました。
参加者それぞれにいろんな気付きがあったと思います。
「汎市場化」「金銭至上主義」に抗いながら生きている私としては、金銭経済的に国家の全体像を把握しようという発想そのものが、新自由主義経済学者が目指すところであり、現在の政府が国民一人ひとりの金銭状況を把握しようとしている動きに加担するような話なので否定的ですが、そういうことも含めて、会計や財政に関することに多くの人がもっと関心を持って行くことが大切だと思っています。
ですから、通貨や新しい経済発想に関するサロンは今後も企画していきたいと思っています。
こんな話題を提供したいという方がいたらご連絡ください。
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