■湯島サロン「5年生存率25%のがん体験から気づいたこと」報告
小細胞肺がんサバイバーの岩崎さんのサロンには、10人を超す参加者がありました。
岩崎さんと同じように、厳しい状況を体験した方も少なくありませんでした。
テーマが重いだけに、どんな雰囲気になるかなと思っていましたが、岩崎さんが淡々と自らの体験を紹介し、そこで気づいたことや課題などを前向きに話してくれたので、みんなそれぞれに気づきや思いを持てたサロンになったと思います。
まだ闘病中にもかかわらず、冷静に体験を語り、参加者の質問にも誠実に応えてくれた岩崎さんに感謝します。
岩崎さんはサロンのために「小細胞肺がんサバイバーの独り言」と題するパワーポイントを作ってきてくれました。
最初に、岩崎さん自身の小細胞肺がん治療の経緯を時系列で紹介してくれました。詳細な経緯報告なので実に生々しい話ですが、実に淡々と。
そして、標準治療(化学療法と放射線)の副作用と後遺症について話してくれた後、告知から現在までの3年間での気づきを話してくれました。
気づきに関してタイトルだけ書けば、「玉石混交のがん治療」「情報収集に無関心ながん患者」「半信半疑(half-truth)のがん関連情報」、さらに「新しい治療法への期待」といった内容です。
私も体験がありますが、がん告知を受けた当人や家族は、がんに関する知識を得ようと最初は手当たり次第に情報を集めます。しかし、そのあまりの情報の多さと玉石混交さに疲れ切ってしまいがちです。岩崎さんの話は体験した人は痛いほどに共感し、未体験の人にはいざというときの参考になったと思います。
新しい治療法の話やドラッグ・リポジショニング(既存薬、開発中もしくは開発中止となった医薬品を活用し、当初想定していた疾患とは異なる疾患の治療薬に転用すること)の話は元気づけられる話でした。
もうひとつ具体的な話としては、がんの転移を防止するという意味で、岩崎さんが自由診療で服用している薬の話もありました。この話は参考になった人も少なくないでしょう。私は初めて知る話でした。
岩崎さんは最後に「スタック・イン・ザ・ミドル(真ん中、どっちつかず)層への無関心」という話をしてくれました。がん患者に関する情報やエピソードは、末期癌やステージ4からの奇跡の生還(もしくは悲劇)の話、もしくは初期に発見できたという幸運な話が多い。これは、がんに限らず、多くの病気に関しても言える。
5年生存率は25%だったとはいえ、小細胞肺がんもスタック・イン・ザ・ミドル的な病気なのだそうです。岩崎さんは、自分のような「どっちつかず」の患者、いわゆる「スタック・イン・ザ・ミドル層」も、再発や転移に怯えているにもかかわらず、希望を与えてくれる、光明を見出せるような話は皆無に近い。ネット記事も参考になる書籍も見当たらない。しかし、重症患者の事例はあまり参考にならない。
岩崎さんは数年前に脳梗塞を体験していますが、その時もまさしくスタック・イン・ザ・ミドルで、有益な情報は得られなかったそうです。
がんの闘病に関する書籍は多いですが、重篤にまで至っていない患者にとって参考になる情報は少ないというのです。ここを何とかできないだろうか、というのです。
こういう話の後、参加者からも自らの体験談を紹介したり、岩崎さんに具体的な質問をしたり(かなりぶしつけな質問にも岩崎さんは答えてくれました)、密度の高い3時間でした。私はかなり疲れ切りましたが。
内容をうまくお伝え出来ずにすみません。
岩崎さんの話のポイントをまとめたパワーポイントをぜひ読みたいという方がいたらご連絡ください。岩崎さんの了解が得られれば送らせてもらいます。
こういう体験談がきちんと語られ、情報がしっかりと蓄積される仕組みがあるといいなとずっと思っています。「半信半疑(half-truth)のがん関連情報」を集積し、データバンク化するだけでも意味があるように思います。
妻ががんで亡くなった後、私もそうした取り組みをしたいと思ったことがあるのですが、気力が戻らず取り組めませんでした。岩崎さんが言う、スタック・イン・ザ・ミドル層、あるいは初めてがん宣告を受けた人向けの、人間もつながっている情報バンクができるといいですね。
実際にそうした仕組みを作るには私はやや歳をとりすぎました。どなたか取り組まれる方はいないでしょうか。
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