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2021/05/04

■5月憲法サロン報告

恒例の、憲法をテーマにした湯島のサロンは、今年は「私にとっての日本国憲法の意味」を話し合うことにしました。
外に出かけたくなるような行楽日和と緊急事態宣言下という、二重の悪条件にもかかわらず14人の人が集まりました。やはり憲法記念日という日があることには大きな意味があります。

Kenpo2021

最初にそれぞれから、「私(自分)にとっての日本国憲法の意味」を一言ずつ話してもらってから話し合いに入ることにしました。
ところが、一言では終わらない人も多く、しかも「自分にとって」というよりも「社会にとって」あるいは「みんなにとって」という話が多かった気がします。
なかには、毎朝、日本国憲法の前文を音読しているという人もいましたが、日本国憲法と生活との距離は遠い一方で、しかし、憲法に関しては語りたい人も多いようです。

問いかけた責任から、私にとっての憲法の意味を話させてもらいました。
日本国憲法は、私の人生を守ってくれるものです。もし日本国憲法がなければ、戦場への派遣指示を受け取っても拒めませんし、ヘイトスピーチを浴びせられても身を守れない。外出禁止を言われたら湯島のサロンにも来られなくなります。
日本国憲法は私の行動を制約するものではなく、私の生き方の指針を与えてくれる「私の守り神」なのです。

日本国憲法には「国民の義務」という表現がありますが、憲法は本来、どういう国にするかの大きなビジョンや方針を定めたものです。
憲法は一般に為政者に向けての指針といわれます。ですから、為政者が国民に向けて定める法律とは性格が全く違うのですが、日本語では同じく「法」という文字を使うために混同されているように思います。そのうえ、日本国憲法には「国民の義務」などという文字も明記されていますから、混同してしまうのです。

日本国憲法の文章表現に関して、逐条ごとに赤ペンを入れたリンカーンクラブの武田さんも今回は参加されていましたが、日本国憲法をよく読めば日本語としてもおかしな文章はたくさんあります。そうしたおかしな表現を直すことも「改憲」というとしたら、「改憲」とか「護憲」とかいう議論は本来成り立ちません。憲法にとって大切なのは、その「こころ」ではないかと思います。そして、その「こころ」を入れるのは、日本の場合は、主権者たる国民のはずです。

憲法は、為政者の暴走を回避するためのものだとしたら、暴走を回避するためには、国民が憲法への関心を高め、憲法を拠り所にして政治をしっかりと監視しなければいけません。
しかし、昨今の状況はどうでしょうか。ご都合主義な憲法解釈や為政者の違憲行動が広がっているにもかかわらず、国民はなすすべもなく、あきらめ気味なのではないでしょうか。さらに生活や生命の不安の前に、関心を持つ余裕さえ失いがちです。
そういう状況を変えなければいけないのではないか。

イタリアの哲学者ジョルジョ・アガンベンは、世界の立憲法治国家においては、次第に「例外状態」が常態化しつつあると言っています。「例外状態」というのは、ドイツ法の概念で、憲法や法の支配を緊急事態宣言などによって一時的に停止する状態のことですが、たとえばテロ事件やコロナパンデミックを背景にして、国民の自由や権利の制約に対する人々の抵抗感が弱まってきていることは否定できません。
地球環境問題も、そうした動きを正当化する要因の一つといってもいいでしょう。
私たちは、今、さまざまな脅威(おどし)におびえさせられながら生きている。

昨今のコロナ感染症パンデミックは、そうした国民の自由や人権が制約されている状況を一挙に加速させると同時に、可視化してくれました。
そういう問題は、憲法とは別の話だと思う人もいるかもしれませんが、むしろこういう状況であればこそ、しっかりと憲法と生活のつながりを考えなければいけないのではない。日本国憲法はもはや「空気のような存在」ではなくなってきているのです。

サロンでの議論はこういう話とはほとんど別の話で盛り上がっていました。
示唆に富む話もたくさんありましたが、報告しだすときりがありませんのですべて省略。
参加者はそれぞれに日本国憲法について、いろいろと考えを巡らせ、憲法は決して自分の生活と無縁ではないという感じを強められたのではないかと思います。

日本国憲法には為政者の暴走を止める材料がたくさん含まれています。
私たち国民は、そうした憲法の力をもっと活用して、さらに生きやすい国と世界にしていく意識を持つことが大切だと改めて思いました。

今回、初めて湯島のサロンに参加してくださった方は、翌日こんなメールをくださいました。

帰ってからも憲法が気になってこんなの見てました。
https://www.youtube.com/watch?v=L4xiKi2pHLM&t=2552s
おかげさまで憲法三昧の一日を過ごすことができました。

この方がみたのは、2007年に放映された「NHKスペシャル 日本国憲法誕生」です。
こうした動画を見るだけで、日本国憲法への愛着も高まり、親近感が高まるはずです。
そして動きたくなる。

憲法について話したい人がいたらいつでも大歓迎です。
ぜひご連絡ください。

なお、案内文で紹介した、丸山真男さんの講演記録の一部を次のサイトに一時的に掲載しています。
http://cws-osamu.cocolog-nifty.com/.../04/post-f72fd6.html
私が大学に入学した1960年の53日に講演された記録です。
もしまだお読みでない方がいたら、お読みいただければうれしいです。

 

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