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2021/06/09

■湯島サロン「今、女性の労働はどうなっているか」報告

「新自由主義と男女平等」をテーマにした福田さんのサロンの1回目は、法制度の動きや統計データを使いながら、最近の雇用労働市場の状況を、女性労働の視点から概観してくれました。これを踏まえて、2回目は現場から実態を見ていく予定ですが、まずは全体の動向を事実に即して確認していく必要があるというのが福田さんの考えです。

そのために、福田さんは、「女性の労働」の実態につながる法制度の動向や労働力や賃金に関する統計をいろいろと調べてきてくれました。

福田さんが最初に示したデータは、男女賃金格差があまり改善されていない現状と非正規雇用者の急速な増加傾向でした。女性の非正規雇用者の年間収入は100万円未満が44%という数字も示してくれました。女性の雇用環境は相変わらずひどい状況と言ってもいいでしょう。
しかし問題は女性だけではありません。女性の労働状況は男性の労働状況にも大きな影響を与えています。男性もまた非正規雇用が増え、給与水準も低下しています。

こういう事態に向かう起点は、1985年の労働者派遣法の改正にあるのではないかと福田さんは言います。それによって、それまで厳格に管理されていた派遣労働が一挙に広がったのです。

そして、その同じ時期に、「男女雇用機会均等法」が成立したことと、それはつながっているのではないかと福田さんは問いかけました。その点にこそ、本質的な問題が潜んでいるのかもしれません。

私も、男女共同参画、さらには女性活躍社会というスローガンこそが、いまの悲惨な労働状況を生み出したのではないかとずっと思っています。女性たちは、言葉に騙されてしまっているのではないか、と。

それはともかく、福田さんは、続いて、パート雇用の始まりから労働者派遣の歴史を紹介してくれました。そして、そもそも「人材派遣」という言葉がおかしいと指摘してくれました。日本が派遣解禁の根拠としたILOの条項でも、派遣に該当する語は“temporary staff”つまり一時的な臨時スタッフという意味で、「派遣」という意味はありません。

そういえば、「非正規社員」「正規社員」という言葉も私には極めて違和感があります。
まずは言葉の吟味が必要かもしれません。

私は、経済成長を背景にした「女性の社会進出」の時期に会社生活を送っていましたので、福田さんの話はとても共感できました。同時に、世代の違いによって、同じ言葉も違う意味をもっていることにも気づかせてもらいました。

福田さんの問いかけからさまざまな話し合いがはじまりましたが、考えさせられることがたくさんありました。

話を聞いていて、問題は「男女平等」ではなくて、仕事(労働)の報酬が仕事によってではなく、人によって決められるという仕組みにあるのではないかと思いました。いわゆる「属人給」ではなく「職務給」に発想を変えればいいだけの話なのではないのか。それを男女問題にしている限り自体は変わらない。問題を男女の問題に矮小化せずに、働き方や仕事と報酬の関係に向けていくことが必要な気がします。

もっとも「職務給」というとらえ方には別の問題もあります。
そこで思い出したのが、最近話題のデヴィッド・グレーバーの「ブルシット・ジョブ」です。グレーバーは、その本の中で、「仕事の有用さと経済的報酬は反比例する」「誰の役にも立たず無駄な仕事ほど高給」というようなことを書いています。たしかに最近話題になっているエッセンシャルワーク(介護職や清掃員)の報酬は高くはありません。
それにくらべ、雇用労働の多くは「ブルシット・ジョブ」、クソどうでもいい仕事だというのです。

私自身もずっとそう思っていて、それが嫌で会社を辞めたのですが、最近は、正規社員は組織に隷属することで高給を得る人、非正規社員は自由だが経済的な報酬には恵まれない人と捉え、どちらを選ぶかは個人の自由と思っていましたが、どうも最近はそう割り切ってはいられないほど生活の実態は切羽詰まっているようです。
サロンでもそういう話をしようと思ったら、暗黙のプレッシャーで封じ込められてしまいました。

グレーバーは同書の中で、「ケアリング労働者の反乱」に言及しています。エッセンシャルワーカーたちがブルシット・ジョブであふれている世界に行動を起こしただけでも世界は変わるでしょう。

ちなみに、福田さんはサロンには女性の参加が多いだろうと思っていたようですが、実際には女性は2人だけでした。コロナ禍のためかもしれませんが、こういうところにも問題があるのかもしれません。

次回はまだ決まっていませんが、今回の状況を踏まえて一歩進んだ議論になると思います。ぜひ女性のみなさんの参加も期待しています。

Fukuda1

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