■「支配者たちの卑劣な格言」
アダム・スミスは経済学者というよりも道徳学者だったという人がいます。
最近話題の渋沢栄一も「論語と算盤」という著書を残していますが、そもそも経済は「経世済民」、つまり道徳の話だったとも言えます。
そのアダム・スミスが、「支配者たちの卑劣な格言」と呼んだものがあります。
それは、19世紀前後に広がった、次のような「新しい時代精神」を示す格言です。
「すべては私たちのために、他の人々のためには何も無用」。
「自分以外のことはすべて忘れ、ただ富を獲得せよ」
一時期、日本でも広がった「〇〇ファースト」というスローガンは、まさにこの格言を象徴したものだと私は思います。
いまでもこの「〇〇ファースト」という言葉を使う人がいますが、こういう言葉に出会うといつもアダム・スミスの「道徳感情論」を思い出します。
アダム・スミスは「他者への共感、完全な平等という目標、そして創造的な仕事のための基本的人権」を強調していたと思いますが、経済活動をしている現在の人たちにさえ、そういう発想はもう消えてしまっているのかもしれません。
しかし、「〇〇ファースト」発想は、「支配者たちの卑劣な格言」にとどまらず、どうも社会に蔓延しだしているようです。
たとえばそんな姿をワクチン接種の予約取り風景に私は感じました。
3・11の後の買いあさりの風景も思い出しました。
つまり支配者の行動は、被支配者にも広がっている。
まさに「悪貨は良貨を駆逐」するのです。
経済が道徳と相反するものになってしまった。
人を救うはずのお金が、人を滅ぼし始めた。
私が、お金から解放されたいと思い、ワクチンもしない理由のひとつがここにあります。
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