■第8回益田サロン「メビウスの帯を使って生物と環境の関係を考える」報告
細菌学者の益田昭吾さんの第8回サロンは、まずは参加者各自がメビウスの帯をつくる「手作業」から始まりました。
メビウスの帯は、帯状の長方形を180°ひねって貼り合わせたもので、裏と表が平面的につながっているのが特徴の一つです。
益田さんは、まず2つのメビウスの帯を参加者につくらせ、一つは真ん中から、もう一つは真ん中ではなく端っこから切り出して、切り口にぶつかるまで切るように指示しました。さらにもう一つ、180度ではなく360度、つまりふたひねりさせた輪も作らせ、それは真ん中から切るようにいいました。
その結果から何を感ずるか。
それから「生物と環境」「自己と非自己」を考えるヒントが得られるのではないかというわけです。
実際にやってみるとわかりますが、いろんなことに気づかされます。
メビウスの帯を真ん中から切っても切り離されることはありません。しかし、端っこから切り出していくと、不思議なことに2つの輪がつながってできてきます。そしてその一つがまたメビウスの帯になっているのです。
私は、2つの輪のつながりに興味を持ちましたが、益田さんは、そこで何かが消えているのではないかと問いかけます。前者で言えばメビウスの帯が消えた、後者でいえば、新しい帯が生まれた(言い換えれば2つの輪の境界が消えた)ということになります。
益田さんはこれまでのサロンで、生物と環境を同心円でよく説明していましたが、それにつなげれば、地と図の境界がなくなり、それぞれが支え合って不二の関係になるとも言えるのではないかと言うわけです。しかもその同心円は無限につづいていく。
そういう動きは、「ひねり」を入れ、さらに「ハサミ」という介入によって始まる。
そこからは人によってさまざまなことが気づかされるでしょう。
生物と環境との関係や、つながりということの意味、あるいは地と図の意味。
益田さんは、「○○は××のようなもの」というアプローチで人は理解の世界を広げていくと言います。この場合の〇〇や××が何なのかも人によって異なっているでしょう。
とまあ、こう書いてしまうと退屈なのですが、サロンではなかなか議論はかみ合わず、まるで禅問答のようなやり取りもありました。そのため、参加者からは、次元が違う話のやり取りなので意味がないのではないかという指摘もあったほどです。
しかし、まさに次元を超えた議論は、メビウスの帯のような位相幾何学の世界を象徴していて、それ自体も興味あるものでした。言葉の応酬もありましたが、手で語り合った人もいたかもしれません。益田さんから言われたのではない帯づくり作業をしていた人もいます。
参加者の一人からは、いつも頭で考えているが、手を使うのもいいものだという感想がありました。
私自身はいささか消化不良ではありましたが、メビウスの帯の面白さを改めて体感しました。生物と環境の関係も、自分なりにかなり理解が深まった気がします。
予告にあった「夢想と現実」の話題が出なかったのが少し残念ですが、益田さんがそこにどういう思いを乗せていたかも少しわかるような気がしました。
それに何よりも大きな成果は、話し合わないサロンもあっていいのだという気づきです。
益田さんから大きな宿題をもらったような気もしますが。
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