■「‟認知症と拘束”尊厳回復に挑むナースたち」のご紹介
しばらくご無沙汰していた平岩千代子さんから1冊の本が送られてきました。
平岩さんには、私がささやかに医療や福祉の問題にかかわった時には、いつも応援してもらった記憶があります。
その平岩さんが、大学院で医療福祉ジャーナリズムを学び直し、その修士論文をもとに、読みやすいブックレットにまとめて出版されたのです。
「‟認知症と拘束”尊厳回復に挑むナースたち」(日本看護協会出版会 900円)
本を開いて驚いたのは、本書の冒頭が、「父が縛られることに同意はできない」という言葉で始まっていたことです。
その一言で、本書の主旨が理解できましたが、同封されていた手紙を読んで、平岩さんのこのテーマへの思いも伝わってきました。
長い人生を懸命に生き抜いた最終楽章で、身体拘束されるのはあまりにも切なく悲しい。人生100年時代といわれるようになりましたが、「長生きしてよかった」と思える生活や療養の環境を整えることが喫緊の課題です。一市民としてできることはないか。
思ったら行動を起こす。私が知っている平岩さんの生き方です。
直ぐに読ませてもらいました。
本編は平岩さんが出会った、人間の尊厳を根底において活動されている3人の看護師のインタビューです。生い立ちや立場、仕事も違うのですが、そこから伝わってくるのは、いずれも「現場の生の人間の声」です。
病院での身体拘束の話は、今も時々聞きますし、湯島のサロンでも時に話題になります。
しかし本書を読んで思うのは、私にとっても決して無縁の話ではないなということです。
同時に、この問題は、福祉とは何か、医療とは何か、そして、生きるとは何かを真正面から問うてきていることに改めて気がつきました。
私の読後感を一言で言えば、一市民としてできることはある、ということです。
読んでいただくと分かりますが、これは決して医療や福祉に関わるだけの問題ではありません。「はじめに」で平岩さんは、「見える拘束」と「見えない拘束」に言及されていますが、私はそのくだりを読みながら、まさに私たちの日常生活も、今やこうした状況になるのではなかとふと思いました。
だとしたら、看護師ではない私にもできることはあるはずです。
看護師の田中とも江さんがインタビューの最後に話した言葉が、強く心に残りました。
私の考えにあまりに重なっていたからです。
私には社会を変えることはできません。できることは目の前の人が安心して暮らしを営むための支援をすること。言い換えれば、私自身が自分らしく生きたい。これって尊厳のことですよね。
内容を紹介するよりも、気軽に読めるブックレットですので、ぜひ直接読んでいただき、3人の看護師の声を聴いていただきたいと思います。湯島においておきますので、関心のある方は順番に読んでみてください。
また次のサイトから注文できますので、購読してもらえるとうれしいです。
https://www.jnapc.co.jp/products/detail/3906
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