■政治サロン「初めて真面目に投票して感じた日本の政治」報告
今年21歳の川端さんは、18歳から選挙権を得た世代です。
川端さんはこれまでも投票に行っていましたが、今回は、「自分だけ」では生きられない自分の人生の選択をしていくのが政治なんじゃないか、という思いで、選挙投票に取り組んだそうです。
選挙への姿勢が変わったら、いろんな気づきがあり、政治の見え方も変わってきたと言います。
選挙を振り返って、日本の政治を話し合うサロンの第1回目は、大学生の川端さんのそんな体験と政治観をお聞きすることから始まりました。
川端さんがまず感じたのは、「若者よ、選挙へ行こう」という呼びかけや「ネット投票の制度を作ったら投票率上がるんじゃない」というような考えへの違和感でした。
選挙に行くことは手段であって目的じゃない。ただ「選挙に行こう」と呼びかけて対症療法的に選挙に行く人を増やしたところで大事な問題が見えなくなるだけじゃないのかと思ったそうです。
では選挙に行く目的は何かといえば、それはまさに自分の人生につながっている。
選挙でだれに投票するかを考えることは、「他人事」ではなく「自分事」なんだと思えるかどうかが大切ではないかと、川端さんは言います。
テレビの選挙番組での選挙の扱われ方にもいろいろと感ずることがあったそうです。
たとえば、立候補者も番組も、いずれも党の勝敗にこだわっている感じが強く、日本をどうしようかという、政治の内容に関する議論はあまりない。政治とは勝敗だけではないはずだ。たとえ意見が違っていても、お互いにそれぞれの考えをぶつけ合って、より良い世界に向かって取り組んでいく姿勢がもっとあってもいいのではないかと思ったそうです。
一方的に自論を発するだけでなく、お互いの良さを認め合って、新しい政策を生み出す。せめぎ合うだけではなく、お互いの良さを認め合ってもいいのではないか。
たしかに、選挙期間にそういう建設的な論戦がもっとあれば、国民の選挙への関心は高まるでしょう。選挙は国民の政治への理解を深めるいい機会になるはずです。
国民審査に関しては、制度上ついていけない人が多いのではないのかと言います。それにそもそも「不信任の人にバツをつける制度」になっているが、人にバツをつけるのって疲れるからやりたくないという人が多いだろうと川端さんは言います。
たしかにバツをつけるのは、議員を選ぶ(マルをつける)投票とは真反対の行為です。これもまた、選挙へのモチベーションを下げている一因かもしれません。選挙と切り離して、別のかたちでやる方策はいくらでもるはずです。
このように川端さんには、今の選挙制度への違和感が強かったようです。
しかし、そうはいっても、自分の人生の選択とつなげて立候補者の政見放送やテレビでの言動を見ていると、しっかりした意志を持っている人も見えるようになってきたと言います。つまり、言葉だけの人や勝ち負けだけしか考えていないような人ばかりではなく、意志を持っている人もいる。そういう人がテレビに出て来ると気が楽になる感じがしたと言います。
結果的には、川端さんは、政治への信頼感を少し取り戻したようです。
最初は、あまり実体を感じないような人でさえ、よく見てみると、身体のすみずみまで意志のない人はいない。顔つきが全く不健康でも、当人の意識がそこに向いていないだけで、ひとを想う気持ちのようなものが陰には潜んでいるように見える。そんな気がするようになってきたと言います。
もしかしたら、今の日本の政治家は、自分も含めて、私たち国民の姿を映す鏡ではないのか。
つまり、私たちは政治家をもう少し信頼して、期待するべきではないのか。
最初から政治家に期待もせずに非難ばかりするのではなく、もっと政治家を信じて、自分の気持ちを投じる、そして期待を向ける。そういう風に気持ちを向けることが実際に世界を変えていくことにつながるのではないだろうか、と思うようになった。
それも選挙投票日だけではなく、常日頃から彼らの言動に関心を持ち、期待していくことこそが、本当の意味での「投票」ではないのか。
そのためには、政治家を見放すのではなく、その人の心を見つめ続けることも必要なのではないか。
つまりは、すべての出発点は、自分にあるのではないか。
政治は他人事ではなく、自分事だと気づけば、政治の見え方も変わってくる。
どの党が勝ったとか誰が当選したかということも重要だけれども、もっと重要なのは、政治に意見を表明できる選挙の機会にこそ、私たちは、自分の人生とのかかわりの中で、政治への関心と期待を強めるべきではないか。
川端さんの話からは、そんなメッセージを感じました。
私には、政治の本質(誰のための政治なのか)を問い直すような問いに感じました。
参加者が少なかったこともあって、話し合いはかなり突っ込んだものになりました。時間も予定を1時間を超える長丁場になり、さまざまな話題が出ましたし、選挙制度の持つ意味や今回の選挙結果の具体的な捉え方も話題になりました。
選挙結果も、人によって受け取り方が違うのも興味深かったです。具体的な政党への評価の話もありました。
最後に川端さんに、今回の体験はどう発展していきそうか質問しました。
たとえば、選挙権だけでなく被選挙権も18歳からに制度改革するような運動や自分の人生の選択と政治を話し合う若者の話し合いの場づくりを呼びかけるような運動をしたらどうかとお聞きしましたが、関心を持ってもらえませんでした。
そもそも、学生同士で、政治を語ることはほとんどないそうですし、今もむしろ忌避されるテーマのようです。
そういう実態を変えていくにはどうしたらいいか。
それが私には最大の関心事です。
なお選挙を振り返るサロンの2回目は、11月25日、今度は久しぶりに選挙活動に関わった生活者佐藤祐子さんがその体験を話してくださいます。
みなさんの参加をお待ちしています。
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