■湯島サロン「世の中にもっと増えればよいと思うもの」報告
今年最後のテーマサロンは、鈴木さんの「世の中に増えるとよいと思うもの」でした。副題に「コロナ禍の「湯島巡礼」で感じたこと」とあるように、鈴木さんはコロナのためにこの2年、サンチアゴ巡礼に行けなかった代わりに湯島のサロンに今年だけでも70回以上参加し、その中でいろいろと考えたことを話してくれました。
驚いたことに参加者が15人。今年のサロンで一番、参加者が多くなりました。
鈴木さんはいつもサロンでは聴き手にまわってくれているので、その鈴木さんがサロンから何を感じているのかはとても興味のあるところなのかもしれません。
湯島のサロンでは、「生きにくさ・生きやすさ」が大きなテーマになっていますが、鈴木さんは「こういうものがもっと増えれば、もう少し生きやすい社会になるのではないだろうか」という視点で、5つのことをあげてくれました。
それは「聞いてくれる人、聞ける人」「好意的な関心」「否定されない場」「議論よりも対話(ダイアローグ)」「弱く多様なつながり」でした。
そしてそれぞれに関して、鈴木さんの個人的な体験も含めながら、その意味を話してくれました。
それらはサンチアゴ巡礼で体験してきたことであり、湯島のサロンにもそういう要素があると感じているそうです。
鈴木さんは最後に、「湯島のサロンは巡礼宿(アルベルゲ)」とおまけをつけてくれましたが、サンチアゴ巡礼者からそういってもらえるのはうれしい話です。
その後、話し合いにはいりました。
私は、これ以外にも「もっと増えればいい」と思っていることはないかと参加者に問いかけましたが、他にはあんまり出てこなかったばかりか、参加者はみんなこの5項目にとても共感したようです。
もしそうであれば、その実現はとても簡単です。
その気になれば、誰にでもできます。
たとえば、「他者の話を聞こうと心がける」「好意的な関心を持つようにする」「自分では他者を否定しない」「議論よりも対話しようと心がける」「弱いつながりを生み出すために誰かに会ったら挨拶をする」。こうしたことは、だれにでもできることです。だからこの5つは、今日からでも自分で増やしていけることではないかとみんなに問いかけました。
でもなぜかそうならない。すぐに否定と議論が返ってきました。
やはり鈴木さんが言うように、実際にはこの5つはあまり存在しないのかもしれません。
いいかえれば、これらはまさに「世の中にもっと増えればよいもの」ですが、結局、誰もがそれを自分では増やそうとはしていない。
こう書いてしまうと身もふたもないのですが、「青い鳥」のように、本当は自分の近くにあるにもかかわらず、みんなそれに気づいていないだけかもしれません。
鈴木さんの評価に反して、湯島サロンの主宰者として今回は、あえて私も相手の言葉を否定し、聞くよりも話すことを優先して議論を挑んでしまいました。巡礼宿の主人としてはあるまじき態度です。
しかし私は、6番目に、そういう「忌憚なく異論反論をぶつけ合う場」も、もっと増えたほうがいいのではないかと思っているのです。
湯島では時にかなり激しい議論がありますが、終わったらお互いにさっぱりして、何のわだかまりも残さない(残す人もいますが)。これはサンチアゴ巡礼宿には多分ないことでしょう。
言い換えれば、感情を素直に出しても、しこりを残さないし、遠慮もされない。そういう思い切り素直に振る舞える場もまた、もっと増えてもいい。
しかし、こればかりは自分だけではつくれないかもしれませんが。
最近は、お互いに関係を壊さないようにと、過剰に相手に気づかいし、本音をださずに、儀礼的な言葉だけで話すことが多くなっているようです。だからそもそも、鈴木さんがいうような場が生まれてこないのかもしれません。
その反面、匿名でのネットの場では、過剰なほどの本音が飛び交い、しかしそこでは感情(怒り)は発せられても、噛み合うことはない。独り舞台でしかありません。
ところで、「世の中にもっと増えればよい」ということを考えていくと、その反面の「なくなればよいもの」とつながっていきます。「増やす」のは大変でも「減らす」のは簡単かもしれません。自分の言動を少し注意するだけで、鈴木さんの提案に沿えるかもしれません。それならもっと取り組みやすそうです。
そう考えていくと、「世の中にもっと増えればよい」ことを考えるのは自らの生き方を問い直すことかもしれません。
今年最後のテーマサロンとして、とてもいいサロンでした。
今回も私はだいぶ「いじられて」しまいました。困ったものです。来年は私ももう少しみんなに好かれる生き方をしようと思いますが、それはハードルが高いので、せめてあまり嫌われないように、少しだけ自重しようかと思います。
湯島のサロンも、鈴木さんが言ってくれた巡礼宿の精神をもう少し意識しようと思います。しかし、6番目の要素もできれば増やしていきたいと思います。
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コメント
佐藤先生
KAE及び湯島サロンに何度か、木下・風早さんと伺った山下です。時折拝読させて頂いております。
12が28日のサロンの議題、世の中でもっと増えれば良いものの6項目についての題材は素晴らしいです。
難しい世の中ですが私には、それぞれの項目が、何のために、が入っていないのではと思います。
異論反論を聴けば解るかも知れませんが、私には消化不良です。コロナが落ち着けば、風早さんとサロンにお伺いしたいと思っております。壮健で佳いお年をお迎え下さい。
投稿: 山下 敏 | 2021/12/29 00:19
山下さん
お久しぶりです。
サロンはいつでも歓迎です。
「何のために」は「もう少し生きやすい社会にするため」にです。
そういう視点での話し合いでした。
投稿: 佐藤修 | 2021/12/29 05:43