■第14回益田サロン「ワクチンの今昔一老学者の感慨」報告
細菌学者の益田さんの「ワクチンの今昔」サロンは、10人の参加者があり、みなさんの関心の高さを感じました。ワクチンに対する安心感が少し揺らいでいるのかもしれません。
益田さんはまず参加者に自著「病原体から見た人間」(ちくま新書)を配ってくれて、その中の「病原体にとって人体は本来の環境ではない」の図を使って、病原体と人間の関係を概説し、そこから前回も話題になった「チフスのメリー」のような感染しても発症しないキャリアの話をしてくれました。
キャリアの人は感染しても発症しないのですが、ウイルスは体内にいるので、状況が変わると発症することがあります。たとえば帯状疱疹は加齢とともに発症しやすくなるそうです。つまり発症する前は、ウイルスとの関係もバランスしているわけですが、それが崩れてしまうのでしょうか。逆に言えば、ウイルスと人間の安定した関係もありうるわけです。
こうしたことを聞いて、ワクチン接種とはキャリア体質化することかなどと早とちりしてしまいましたが、そこから話はだんだん難しくなり、「生ワクチン」「不活化ワクチン」「トキソイド」の話からIg抗体の話などへと進みました。
私にはしっかりと消化できていないので、報告は難しいのですが、益田さんの話や参加者の話し合いの中で、私が行き着いたワクチンとは何かの話を報告させてもらいます。ちなみにこれは私の勝手な解釈です。益田さんの監修も受けていません。
私が行き着いた「ワクチンとは何か」は「自己と非自己の壁を壊し、ゆるやかに両者をつなぐことで、自己の寛容性を高めるもの」ということです。生物と環境からいえば、生物と環境との多様なつながりを「あわい」という形で形成することといってもいいでしょう。
何やら難しそうですが、自己(人間)と非自己(ウイルス)が出会った時に、自己でないものは排除し拒絶するという抗体作用を作動しやすくするためにワクチンという抗原を注入するわけですが、要は自己の寛容性を高めるということではないかと思います。
この解釈は、抗原とか抗体作用とかとは全く別の理解ですので、益田さんにはまた劣等生は仕方がないと言われそうですが、私にはすとんと腹に落ちたのです。
しかし、ワクチンはいうまでもなく自己ではなく(あえていえば「擬自己」と言ってもいいでしょうが)、自己の寛容性は人によって違いますから、時に副反応という悪さを起こしてしまう。ワクチンには常にリスクが伴うわけです。
今回学んだもう一つのことは、「悪いワクチン」「不完全なワクチン」があるということです。いまの新型コロナワクチンは、これまでのワクチン概念とは違うものだという言説もありますが、そう言ってしまうとわけがわからなくなります。しかし、ワクチンにもいろいろあることがわかれば、ワクチン観は大きく変わるように思います。
ワクチンは意図的に軽く病気にかかることでウイルスとの関係づくりの練習をし感染や重症化にそなえるというのが私の素朴な理解だったのですが、自己と非自己の壁を壊すと考えると全く違った視野が開けてくるような気がします。
その先にあるのは自己の消滅です。果たして自己とは何なのか。「私たちって誰だ」という問題にもつながっていきます。こうして話はどんどん広がっていきますが、これ以上はあまりに脱線ですのでやめます。
「ワクチンはウイルスに対する武器」と言ってもいいかという質問もありましたが、これは益田さんには受け入れられませんでした。そもそも益田さんは病気を戦いにたとえるは適切でないというのです。そもそも病原体とか毒素という言葉も、人間側からの勝手な評価であって、宿主との安定した関係こそが、病原体の本性だというのです。
益田さんのこの病原菌観にはとても共感できます。
そうしたことから益田さんは、組織のあり方や経済の仕組みやウクライナ問題も、病原菌観をベースに考えるといろんな示唆が得られると考えています。いつかそうしたサロンもやってもらいたいと思っています。
ちなみに、私のワクチン理解が深まった(?)ところで、新型コロナワクチンの接種を受けるのかと訊かれましたが、やはり接種しようという気にはまだ至りませんでした。
私自身はウイルスともいい関係性を育てたいと思っていますので、私自身が納得できない非自己を体内に取り込んでまで自己の寛容度を高めようとは思いません。ワクチンがなくても、自己の寛容性を高めることは可能でしょう。濃厚感染ならぬ軽微な感染や自己の寛容性を高めることは他にもいろんな方法があると思うからです。
わけのわからない報告になってしまいました。
私には目からうろこの大発見のサロンだったのですが。
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