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2022/04/12

■湯島サロン「ジョーカー予備軍が語る〈邪道と王道の幸福論〉in 2022」報告

引きこもり体験者で自称「ジョーカー予備軍」の牧野さんのサロンは予想以上にたくさんの人が参加してくれました。何よりもうれしかったのは、同じく引きこもりや不登校の体験を公表している多世代の人が参加してくれたことです。

私は、この問題に関しては、閉じたセルフヘルプグループではなく、開かれた場で、体験を踏まえて前向きに話し合える場がもっと増えるといいと思っています。引きこもりや不登校は、何ら特別の話ではなく、みんなもたぶんシェアしていることですから。

しかもうれしいことに、牧野さんは最初に「この場を主張の場ではなく、理解と学習の場にしたい」と話してくれました。これは湯島サロンの理念ですが、私自身最近確認するのをおろそかにしていたような気がします。サロンに参加してくれていた牧野さんは、それを確認してくれたわけです。

ちなみに、牧野さんのいう「ジョーカー」は、数年前に話題になった映画『ジョーカー』の主人公を意味しています。この映画は、「バットマン」シリーズに出てくる悪役のジョーカーを主役にした映画で、なぜジョーカーが生まれたのかを描いた作品です。

参加者の一人がそのあらすじを、思いを込めて紹介してくれました。
牧野さんの話を聞いていて、彼が「ジョーカー予備軍」に込めたメッセージがよくわかりました。私もこの映画は2回観ていますが、なかなかメッセージを素直に受け止められずにいました。改めてまた観ようと思います。今度はかなり理解できそうです。

牧野さんは2部構成で、参加者との話し合いも含めながら、話してくれました。
前半では、牧野さんの体験をある若者のナラティブ(物語)として語ってくれました。時に「私的な思い」がやや過剰に入っていた気はしますが、物語として、自然な感情移入も含めて、参加者には受容(理解)されたように思います。牧野さんが、この語りのために、衣装も含めてさまざまな趣向を凝らしてくれたおかげかもしれません。

話し合いでは同じようなことを体験した人も多く参加してくれたので、とてもリアルなやりとりがありました。もっとも私たち中高年世代は、まだまだ「主張」したがる傾向があり、体験者たちはちょっと話しにくかったかもしれません。体験からの話がもっと聞きたかったのですが、なかなか思うようにはなりません。でも体験者同士の話し合いもいつもよりも少したくさんできたような気もします。

休憩をはさんで、後半に入りました。休憩中、牧野さんは瞑想したり身体を動かしたり、そこにもメッセージを込めていたように思います。

後半のテーマは、タイトルにある「邪道の幸福論」。
牧野さんはそれを3つの項目に整理してくれました。
「健康的に自殺しよう」「他人を見下そう」「世界のみにくさを受け入れよう」です。
まさに「ジョーカー」的で、きちんと説明しないと誤解されそうな表現も含まれていますが、それぞれに関して、牧野さんはていねいに解説してくれました。

たとえば、健康的な自殺とは、我を忘れるような夢中になれる時間を創ろうということでもあり、他人を見下すとは、相手の苦悩を理解してやろうとも受け取れました。また、世界のみにくさを受け入れるとは、みにくさを認めることではなく、変えることができないことはそれを前提に考えよう、というように受け取れました。
いずれにしろ、自責するよりも前に向かって行動しようというメッセージを感じました。
これは私の解釈ですから、参加者それぞれ違う受け止め方をしているかもしれません。

ただ、こうまとめてしまうとなんだか物知り顔の専門家の退屈な話のように聞こえるかもしれませんが、それは私の表現力、あるいは「文字表記」の限界です。
サロンでは、こういう話の中に、牧野さんの現在の生活スタイルが随時散見され、そうしたことがあいまって、もっと豊かなメッセージを生み出してくれていました。

牧野さんはサロンの途中で、時間を延ばすことを提案し、1時間延ばしましたが、それでも終わりそうもありませんでした。牧野さんが自分の問題としてではなく、ある若者の物語として語ってくれたことで、あまり深刻にはならずに、話し合いも広がったような気がします。体験をもつ参加者の話もとてもよかったです。

サロン終了後、牧野さんは、今回は王道の幸福論を話さなかったが、今度やってもいいというような話をしてくれました。
牧野さんの「王道の幸福論」には興味があります。そもそも「幸福」とは何かも含めて、牧野さんのサロンのパート2が実現できるかもしれません。

ちなみに牧野さんは20代です。今回のサロンには前回話をしてくれた10代の翔平さんも参加し発言してくれました。いつもながら若者の感性や知性から学ぶことの多さに気づかされるとともに、学ぶ姿勢を失いたくないなと改めて気づかされたサロンでした。

このテーマで、体験者たちによる公開フォーラムをいつか開催したいと思っています。
彼らから、社会が学ぶことはたくさんありますから。

Joker1

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