■緊急サロン「ウクライナ戦争に関する基礎知識の学習会」報告
4月17日の「ウクライナ戦争のもうひとつの捉え方」のサロンにむけて、まずはウクライナ戦争に関する基礎知識を学ぼうという趣旨でのサロンを開催しました。
幸いに、毎年、1年を振り返るサロンをやってくれている林さんが情報整理を引き受けてくれました。林さんは、ソ連のウクライナ侵攻が始まって以来、単に表面的に起こっていることだけではなく、なぜこういうことが起こるのかという背景に関して関心をもっていたことを思い出してお願いしたのです。
発表者の林さんは、このサロンのために、ネット情報だけではなく、改めて何冊かの関連書籍を読んでくれ、それを簡潔にまとめてくれて紹介してくれました。
林さんはまずウクライナの地政学的な意味や概要の解説の後、ロシアがウクライナに侵攻して以来の動きをざっと紹介してくれました。つづいて改めて読んだ何冊かの関連書籍をベースに、ウクライナの歴史とプーチンの歴史観や政治観につながるような話をしてくれました。
林さんは、専門家ではなく、あくまでも関心を持つ市民の一人として情報を整理してくれたので、とてもわかりやすく、基礎知識の学習会としてはとてもいいサロンになりました。こういう背景知識をもって、ウクライナ戦争報道に接したいと改めて思いました。
ただ、せっかく整理してくれた情報をじっくりと聴き、みんなで話し合いながら消化するには時間不足だったのがいささか心残りです。またもっと多くの人にも聴いてほしかった内容でした。
また参加者の中には、林さんと同じように、背景を調べている人もいましたし、現在起こっている事件に関する情報を多面的にフォローしている人もいて、話し合いからも学ぶことがたくさんありました。話し合うことの意味を改めて実感しました。
林さんはウクライナに関しては、最近、話題になっている「物語ウクライナの歴史」(中公新書)、ロシアに関しては乗松亮平さんの『ロシアあるいは対立の亡霊』や『ゲンロン6・7』を参考にしながら、現代思想史やプーチンの行動を支える世界観や政治思想の背景などを話してくれました。
「物語ウクライナの歴史」の「はじめに」には、『ウクライナ史最大のテーマは「国がなかったこと」』と書かれているそうですが、この一言で今の事態のかなりのことが説明できるように思います。
そこから林さんは、ウクライナの歴史を簡潔に話してくれました。
つづいて、林さんはロシアの現代思想史や現代の政治思想を、プーチンの政治行動につなげながら話してくれました。限られた時間でもあり、たぶん林さんも話し足りなかったと思いますが、プーチンが決して狂って行動を起こしたのではないことはみんな納得できたのではないかと思います。その背景にある「ユーラシア主義」も話題になりました。
私が若いころには、世界は「第1世界」「第2世界」「第3世界」と理解されていましたが、冷戦終了後、「第2世界」という言葉は消えてしまいました。
かわって「歴史の終焉」などという言葉も出回りましたが、いま私たちが暮らしている世界が理想的なわけではありません。「第2世界」とは言いませんが、今とは違う世界があってもいいと私は思っています。そのヒントがもしかしたら今回の事件の中にあるかもしれません。
なにしろ膨大な情報を、限られた時間で紹介してもらったので、ここで報告するのは難しいですが、できればいつかまた林さんには、今度はロシアに焦点を合わせたサロンをやってもらえればと思っています。
最後に林さんは、今回、いろいろと調べてみた感想をまとめてくれていました。
実践活動からの体験的感想であり、とても示唆に富むものなので、林さんの了解を得て、全文を紹介します。
プーチンは悪か、ロシアは悪か。
当然、弱者に寄り添うことや支援は必要だが、戦争当事者の情報は、たとえ被害者のものであっても、大学メディアのものであっても鵜呑みにはできない。
ショッキングな情報が、日常に直接飛び込んでくる。
条件反射的な反応だけに陥らないよう気を付けたい。我々は第3者、だからこそ、感情的な反応から距離を置いて考えることができる。
こういう時こそ背景を知る努力をする。プーチンの歴史観は特殊ではない。
隣国の大国の思想的動きについて、あまりにも関心を向けてこなかった。とはいえ私は普通の生活者。
関心を持ち続けることが辛うじてできること。
極端に走って誤らないためにも、あるいは将来の備えとして。
以上が林さんの感想です。
「こういう時こそ背景を知る努力をする」。とても共感できます。
こうした基礎知識を踏まえて、17日の「ウクライナ戦争のもうひとつの捉え方」のサロンに臨みたいと思います。
それと、ウクライナ史最大のテーマは「国がなかったこと」ということの意味も改めて大切なメッセージだと思います。
「国家」とは何か。
昨年、このテーマでサロンをやりましたが、もう一度やりたくなりました。
また案内させてもらいます。
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