■ジョン・ダワーの「戦争の文化」とウクライナ戦争
ジョン・ダワーの「戦争の文化」を読みました。いつもながら目を開かされます。
ジョン・ダワーは近現代史に造詣が深いばかりでなく、ベトナム戦争やイラク戦争に関しても示唆に富む発言をしてきています。第二次世界大戦後の日本人の生活を描いたジョン・ダワーの「敗北を抱きしめて」は、ぜひ多くの人に読んでほしい本です。
http://cws.c.ooco.jp/book2.htm#001
昨年末に翻訳出版された、この「戦争の文化」も多くの人に読んでほしいと思います。
ダワーの本を読んでいつも感ずるのは、私の歴史の知識がいかに一面的なものであるかということです。同時に、マスコミで報道されている情報も、いかに操作されているものであるかということです。
そうしたことに気づくと、いま毎日報道されているウクライナ戦争の受け取り方も少し変わるかもしれません。
ダワーは、「戦争の文化」が国家を戦争へと導き歴史に汚点を残すことを、9.11後のアメリカを例にとって説明してくれています。
現在の国際法は、戦争を規制しているものの、そのこと自体が戦争を許容していますから、国際法そのものが「戦争の文化」の一部だとダワーはいいます。
この視点はとても大切なように思います。
9.11で起こったのは、グループ思考と群れ行動です、その始まりはやはり飛行機がツインタワーに突入する映像でした。
グループ思考の虜になると、みんなが同じ意見を持ち、議論もなくなるし、異論も消えてしまう。そして群れ行動が蔓延していくとダワーは書いています。そこから出てくるのは、「国のために死をも厭わない」という、私には本末転倒した正義感です。
ダワーは、アメリカに比べて、第二次世界大戦敗戦後の日本には反戦の文化が根をはっていると書いています。私もそう思っていました。
しかし最近の様子を見ていると、どうもそうではなかったようです。
マスコミ報道や多くの人たちのウクライナ戦争への反応を見ていると、そんな不安が高まります。
ちなみに、監訳者もあとがきで解説していますが、本書は「戦争の文化」をテーマにしていますが、「平和の文化」という語で始まり、「平和の文化」という語で終わっています。監訳者の三浦陽一さんは、「戦争の文化」の自覚がないために愚かな戦争が繰り返されるのだとすれば、「戦争の文化」の自覚による「戦争の文化」からの脱却のプロセスがすなわち「平和の文化」なのであり、本書はそのためのパイオニア的な歴史研究である、と書いています。
私もそう思います。それが、この本を多くの人に読んでいただきたいと思う理由です。
よかったらぜひ。上・下巻2冊ですが、下巻だけでもぜひお読みください。
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