■緊急サロン「ウクライナ戦争のもうひとつの捉え方」報告
ロシアによるウクライナ侵攻の映像が毎日テレビで流されています。その映像に触れていると、どうしても思考は方向づけられてしまいます。最近は映像にだまされることも多いので、注意しなければいけません。
一方、ネット情報にはまってしまうと、これまた注意しないといわゆるエコーチェンバー効果で思考が方向づけられてしまいます。
歴史的な背景を知らずに、目先の情報に感情的に振り回されて話している人が多いような気がしますが、そうしたことを避けるために、開かれた場でいろんな立場の人が話し合うことは大切です。
そこで、前回はウクライナやロシアに関する基礎知識を学ぶサロンを開催しましたが、今回はあまりテレビでは報道されることのない情報にも触れながら、メディアに振り回されないメディアリテラシーを高め、あらためてウクライナ戦争を捉え直そうというサロンでした。
最初にまず中島さんから、ウクライナ戦争の報道を材料に、世上に出回っている「マスメディア情報」をどう受け止めるか、というメディアリテラシーに関わる話がありました。メディアに乗せる情報をいかようにも加工できる時代においては、情報の受け手として、ただ無批判に受けいれるだけではなく、しっかりと真偽を評価していく批判的な姿勢が大切です。思考の枠組みも柔軟にし、異論にも関心を持っておくことが大切です。
つづいてき北川さんから、長年フォローしていて信頼性が高い個別情報源の紹介があり、それらからウクライナ侵攻の理解を深めるための視点をいくつか紹介してくれました。また、なぜロシアはウクライナ侵攻したかに関してのさまざまな立場の人の論考を紹介。最後にウクライナ侵攻で世界は変わるのかということに関しても、私見を含めていくつかの見方を話してくれました。
おふたりのお話を受けての話し合いも、さまざまな意見が出ました。
そのいちいちを紹介するのはやめますが、この事件を見て、日本でも平和に向けての活動に取り組みたいと具体的な計画を話してくれた人もいますし、背景は背景として、どうしたら今の惨状を止められるのかと問いかける人もいました。
参加者のなかにも、いろいろと調べ自分で考えている人もいて、世界の人たちがウクライナ戦争(この表現には違和感を表明した人もいますが)をどう捉えているかに関して、日本のマスコミではあまり報道されない話も紹介されました。
そういう情報を並べて聴いていくと、やはり日本はウクライナ戦争に関してもいささか特異な情報状況に置かれているのかもしれない気がします。
いまウクライナで起こっていることに関する見方や評価に関しては、いろいろでしたが、単に表層的な面だけではなく、歴史を含めて、いろいろと自分で調べ、考えている人が少なくないのが印象的でした。まあそういう人が今回は集まったのかもしれません。
本当は、そうでない人たちにこそ、聞いてほしかった話がたくさんありました。
情報が溢れるほど多い最近の状況のなかでは、一人で情報収集しているとどうしても偏りが生じますし、判断も独りよがりになりがちです。マスコミ情報だけでも偏りますが、ネット情報も自分好みのものへと集中しがちです。
こうしてみんなが情報や疑問を持ち寄って、事態の理解を深め、どうしたらいいかを考える、それも自分の問題、日本の問題として、実践的に考えていく。異論を排除するのではなく、異論にも耳を傾ける。そういう場がいろんなところで生まれてくればいいなと思います。
なぜそういう場が生まれてこないのか、そこにこそ現代の最大の問題があるのかもしれません。
北川さんは参考として、3つのドキュメンタリー映画を推薦してくれました。いずれも2015~16年の作品ですが、それを観るだけでも、なぜ今回の戦争が起こったのかの理解が深まります。それがわかれば、戦争を止める方法も見えてくるはずです。
マスコミ情報中心の人たちには、ぜひ観ていただきたいと思います。
もちろん批判的に、で結構です。
- 2015ドキュメンタリー映画「ウィンター・オン・ファイヤー:ウクライナ、自由への闘い」監督 エフゲニー・アフィネフスキー (Netflix)
- ドンバス 2016"ドキュメンタリー映画 監督 アンヌ=ロール・ボネル
https://www.youtube.com/watch?v=ln8goeR5Rs4
- 2016ドキュメンタリー映画『ウクライナ・オン・ファイヤー ―Ukraine on fire—』
https://thefact.jp/2022/3812/ イゴール・ロパトノク監督(オリヴァー・ストーン)
最後に北川さんも言及した、先ほど話題になった東大入学式での河瀨直美さんの祝辞の一部を引用させてもらいます。
例えば「ロシア」という国を悪者にすることは簡単である。けれどもその国の正義がウクライナの正義とぶつかり合っているのだとしたら、それを止めるにはどうすればいいのか。なぜこのようなことが起こってしまっているのか。一方的な側からの意見に左右されてものの本質を見誤ってはいないだろうか? 誤解を恐れずに言うと「悪」を存在させることで、私は安心していないだろうか?
この報告を読んで、さらに「もう一つの捉え方」の話し合いをやりたいという方がいたら、ご連絡下さい。
さまざまな視点から見ていかないと、見えてこないものもあるかもしれませんから。
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