■湯島サロン「知識ゼロで挑む無門関パート2〈世尊拈華〉」報告
久しぶりの金子さんの「知識ゼロで挑む無門関」サロン。今回のお題は第6則、「世尊拈華(せそんねんげ)」です。
「世尊(ブッダ)」が花をかかげた、聴衆の中でただ一人、迦葉(かしょう)だけがそれを見て笑った。このことで仏教の真髄は迦葉ただ一人に伝えられた、というお話です。
金子さんは、案内文で、この話には、師匠が弟子にどのようにその技芸における神髄を伝えるかという問題、さらにはコミュニケーションの根本問題「伝わる/伝わらない」とはどういうことかを示唆していると呼びかけていました。そして、「その答えはおそらく皆様方の予想外の地点にあります」とヒントもくれていました。
私も事前に何回か読んだのですが、難解であると同時に、極めて簡単なような気もします。いや、簡単なようで難しいというべきかもしれません。さて金子さんはどう解いてくれるのか。
サロンには、禅にもなじみがあるという人も参加していましたが、最初にまず、改めて各自、「無門関」の「世尊拈華」を読みました。そこでそれぞれの意見を、ということでしたが、なかなか発言がありません。
金子さんの誘導で、少しずつ意見が出てきましたが、公案を解くところには達しない。しかし「金子導師」は、突き放すことなく、巧みに「近づいてきた」「もう一息」といって、みんなの思いを引き出し、方向づけてくれます。時々、ヒントも付け加えながら。
そして行き着いたところは、予告通り、みんなの「予想外の地点」でした。
もっとも、その予告もまた、大きなヒントになっていたのですが。
その解は、ネタばらしになってしまうので、書きません。解が提示されてしまえば、公案の意味がなくなりますから。
それに、公案は「結果としての解」ではなく、「過程としての解」に意味があるのでしょうから。
金子さんが具体的に説明してくれたように、公案のなかにヒントは散りばめられていました。
金子さんは、途中で、「ウミガメのスープ」の話もしてくれました。
そして、金子さんはこう付け加えました。
無関係に見えることがらにも、因果はある。そうした「原因」と「結果」を論理的につなげる説明を示すのが、「公案を解く」ひとつのかたちだと。
「世尊拈華」でいえば、「掲げた花」と「破顔微笑」、「微笑」と「真髄の継承」という2組の原因-結果が考えられます。そこをつなげる「合理的な説明」を見つけることが、公案を解くことになるということでしょうか。
後の話し合いで出ましたが、公案によっては、この「原因-結果」の構造のないものもありますが。
また「伝承」というと、AからBへ、と一方向的な流れを想定してしまうが、情報の流れのない「伝承」もあるのではないか、とも話してくれました。
「コミュニケーション」とは、もともと、「共通の世界を持つ」という意味ですから、必ずしも「伝達」はなくとも成り立ちます。これも大きなヒントでした。
「世尊拈華」の公案には、いろんな示唆が含まれています。考え出すと際限がない。それもまた公案の面白さかもしれません。
かくして金子さんは、「無門関」の「永世愛読者」になったわけです。
サロンの後、参加者のおひとりから、「私の「言葉頼り」がまだまだ大事な本質をとらえられない障りとなっていることに気がつきました」というメールをもらいました。同時に、その人は、自分はこう解きたいとも書いてきました。それもまた俗人の私には納得できるものでした。
念のために言えば、その人は、金子さんの問い方に異を唱えたわけではなく、「いずれにしても「考えること」が面白かった」と書いてきたように、「過程としての解」にいろんな気づきを得たのだと思います。そこにこそ、無門関を解く面白さがあるのでしょう。私もまた別の公案を読みたくなりました。金子さんに次のお勧めはと訊いたら、第8則の「奚仲造車」を勧められました。もし気が向いたらみなさんもぜひ。
ちなみに私は、「花」や「破顔微笑」に関心を向けすぎて、事態の本質をいささか見誤った気もしますが、参加者の中にも、「花」や「笑」に焦点を重ねた人もいたでしょう。
そんな話も少し出て、「花笑み(「花咲み」とも書くそうです)」という言葉も教えてもらいました。最近、畑作業にはまっている私には、とても納得できる言葉です。
「破顔」と「微笑」も私にはつながりませんが、考え出すと際限がありません。
ちなみに、今回も本論に入る前の金子さんのお話もとても面白かったです。
その面白さは、なかなか文章では伝えられない。
それが少し残念です。
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