« ■5月オープンサロンのご案内 | トップページ | ■節子への挽歌5328:また(軽く)倒れてしまいました »

2022/05/05

■2022年「憲法」サロン報告

今年の湯島の憲法サロンは、ウクライナのこともあって、「平和」をテーマにしました。ただ、9条に焦点を合わせるのではなく、「安全保障」と「人権尊重」の軸をおいて、参加者それぞれが自らの生き方を問い直してみようというサロンを呼びかけました。
結果的には、参加者が一家言ある男性が多かったこともあり、生き方論には残念ながらいきませんでしたが。

最初に、私から話し合いの論点を話させてもらいました。

話し合いの入り口は、ウクライナ戦争報道が起こしている最近の9条に関連した最近の風潮にしたいと思いました。大きく言えば、「核武装論を含む軍事力強化論」と逆に「国連改革も含めた非武装思想の徹底」との2つの流れが出ているように思います。

私が大きな不安を感じたのは、ウクライナのゼレンスキー大統領の国会でのスピーチを聞いた後、山東議員が「命をかえりみず祖国のために戦う勇気」を讃えた発言です。「個人のいのちよりも国家を守ること」が大切であり、「国のために死ぬこと」が讃えられる。まるで第二次世界大戦前の日本です。その先にある社会は目に見えるようです。
そうした風潮に対して、日本国憲法はどう機能するのか。

第2に、「憲法が守ろうとしているのは誰か」という問題。言い換えれば、平和とは、「国家にとっての平和」なのか、「個人にとっての平和」なのか、です。ウクライナ戦争では、この2つの平和観が可視化されているように思います。

それはまた、「日本国憲法9条を支えるもの」につながっています。これに関しては、「国際連合を中心にした世界平和への期待」と「核兵器を含む米国軍事力への依存」とともに、「日本国民の非戦平和の覚悟」とが考えられますが、最近はどうも1番目と3番目の要素は遠のいてしまっています。したがって、9条は今や風前の灯火という感じがします。つまり支える根拠を失いつつあります。

4番目の論点は、どの段階での平和を問題にするかということで、私たちの生き方は変わってくるという論点です。
「現実としての平和」としては、構造的な格差問題も論点になるでしょうし、「手段としての平和」に焦点を合わせれば、核抑止論も含めて、武装の問題(非武装も含めて)が重要になります。さらに「目標としての平和」を問題にするのであれば、「平和」とは何かが重要な論点になるでしょう。
いまはそうしたさまざまな「平和」が混同されて議論されているような気がします。

したがって最後の論点は、「平和とは何か」ということです。平和とは戦争の問題なのか、あるいは社会の問題なのか。もし社会の問題であれば、格差問題や人権問題こそが、平和の本質と言えるでしょう。
今回のサロンは、この最後の論点を目的にしていたのです。つまり、「国家よりも人間を優先」、さらには「(抽象的な)人間よりも個人を優先」した平和に関する話し合いをし、そこから私たちの生き方を問い直そうと思っていました。

最後に、議論の背景としての共通基盤として、添付の図に従って、「5つの暴力行為」に関して整理させてもらいました。
ダウンロード - 2022e686b2e6b395e382b5e383ade383b3e8b387e69699.docx

そして話し合い。
話し合いは、ウクライナ戦争から入ったために、いささか現実論に入り込んでしまい、憲法サロンのテーマとは違った方向に動いてしまいました。またどうしてもいまの日本国憲法に呪縛されてしまい、理念よりも手続き論に話題が行きがちでした。
話し合いは盛り上がりましたが、残念ながら「平和」と「憲法」に関する議論にはなかなかいけませんでした。

サロンの最後に、あまり憲法の話にならなかったのが残念だという指摘もありましたが、これは進行役の私の責任です。私の最初の説明もあまりに簡単すぎて、十分に伝わらなかったのかもしれません。

最後に、住民活動に関わっている参加者から、実際の住民活動の中では、「安全」「安心」という言葉は出てきても、「平和」という言葉はほとんど出てこない、という話がありました。
そこで気づかされたのですが、そもそも「平和」という言葉そのものが、生活者の言葉ではないのかもしれません。
企画者として、また問題提起者として、大いに反省させられました。
せっかくの憲法記念日に集まってくださったみなさんには申し訳ないことをしてしまい、気が滅入ってしまっています。

元気が戻ったら、改めて、個人の安全・安心にとって憲法とは何かを話し合うサロンを企画したいと思います。
今度はもう少していねいに、論点も説明し、できれば「攻撃力」は武器だけではないこと(今回も話しましたが、まったくと言っていいほど共感してもらえませんでした)も話させてもらおうと思います。

Kenpou2022

|

« ■5月オープンサロンのご案内 | トップページ | ■節子への挽歌5328:また(軽く)倒れてしまいました »

サロン報告」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« ■5月オープンサロンのご案内 | トップページ | ■節子への挽歌5328:また(軽く)倒れてしまいました »