■湯島サロン「原発事故で放出された放射性物質の行方」報告
山森さんの自然科学サロン第2弾です。
福島の原発事故による海洋汚染に関心をお持ちの本間照光さんからの要望もあり、今回は「海流や地殻変動」の面から「原発事故で放出された放射性物質の行方」をテーマにすることになりました。
いつものように山森さんはテーマに即した関連資料を50枚近くのパワーポイントにまとめてくださって参加者に配布してくれました。
それに基づき、原発事故由来の放射性物質といった基礎知識から、いま問題になっている「核のゴミ」の問題まで、図解を使いながら、とてもわかりやすく話してくれました。
福島原発事故によって放出された放射性物質は、8割が海に入り込んでいるようです。大気に放出された量の4倍が海に入り込んでいるわけです。大地や森林の汚染は目立ちますが、海に入ってしまうとなかなか実感できない。しかし、それは海流に乗って世界中に拡がっていっているのです。もちろん大気中に飛散した放射性物質も地球全域に広がっているわけですが、いずれにしろ放射性物質は福島や日本に留まっているわけではないのです。
そうした動きを、山森さんは地図で示してくれました。とてもわかりやすく、改めて福島の事故はじわじわと世界中に影響を与え、しかも私たちの食生活にもどんどんつながってきていることがわかります。
念のために言えば、放射性物質は「事故」だけで放出されるわけではありません。そもそも核実験による放出がありますが、原発を稼働していれば微量とはいえ放射性物質は放出されているでしょう。原発事故は、それを体感させてくれたとも言えるでしょうが、10年も経つとそれも忘れられがちです。
つづいて地殻変動の面からの原発の危険性や核ゴミ問題についても、同じようにさまざまな調査結果や変動地形学の知見などを踏まえて解説してくれました。
なんとなく知っていたことも、こうやって体系的に説明を聞くと、改めて問題の深刻さがわかります。
山森さんは、電力会社や地質学者の意見の違いなども一部説明してくれましたが、いずれを信じていいか、私たち一般市民にはなかなかわからない。そこから過剰な不安や過剰な信頼が生まれかねません。今回の山森さんからの説明を聞くだけでも、少し現実が見えてきます。山森さんが以前から言っているように、自然科学に関しても、もっと私たち市民が関心をもって理解を深めていくことが大切です。山森さんのお話はいつも世界を広げてくれます。
残念だったのは参加者が少なかったことです。たくさんの人に聞いてほしかった内容です。
山森さんのお話を詳しく紹介することは難しいので、もし関心を持ってくださる方がいたら、山森さん(7804003yama@gmail.com)か私(qzy00757@nifty.com)に連絡していただければ、当日の資料をお届けしますのでご連絡下さい。
山森さんの説明の後、本間さんから、「週刊エコノミスト」や「科学」への最近の寄稿論考も紹介してくれながら、「核のごみ最終処分地選定」をめぐる問題などの話をしてくれました。
本間さんは、いま起こっている、「言われていること」と「現実」のずれの先に、「危機から破局へ」の不安を強くお持ちです。そして、戦後日本のGHQ支配下での「原爆報道規制」の繰り返しが、今度は日本政府によって行われているのではないかと言います。
さらに、問題の焦点が「実害」から「風評被害」へと置き換えられてしまっているのではないか。実害の調査こそ大切なはずなのに、終わったことだと言って、しっかりした調査もしない、いや時にはさせない。本間さんは、そこに大きな不安を感じています。
今年初めに、原発汚染水は安全だというチラシが、経産省と復興庁連名で福島県の一部の学校に配られるようなことも起こっているそうです。本間さんが「破局」という言葉を使うことがよくわかります。
ちなみに、本間さんの最近の原発事故関連の論考や当日配布の資料も、前述の山森さんのデータと一緒に、山森さんがまとめてくださっていますので、ぜひお読みください。
話し合いもさまざまなに拡がりましたが、やはりもっと「現実」の情報を拡げていくことが大切です。私たちは、あまりに知らなすぎる。山森さんのサロンでいつも感ずることです。
専門分野だから専門家に任せよう、科学は難しい、知っても動きようがない、などとつい思いがちですが、「言われていること」をそのまま受け入れるのではなく、「現実」を知ろうとする姿勢は持ちつづけたいものです。
もしこんなことを知りたいという方がいたら、ご連絡下さい。できるだけサロンを企画したいと思います。すべては「知ること」から始まりますから。
また、こんな分野であれば話してもいいという方がいたら、ぜひご連絡下さい。
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