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2022/08/30

■湯島サロン「原発と平和パート2 核時代にしっかりと向き合おう」報告

第五福竜丸展示館スタッフの黒田礼子さんのサロンにつづいて、核問題を考えるサロンの2回目は、保険の切り口から原発や核の問題に長年取り組んでいる本間照光さんに、「人類存亡の核時代」と題して、問題提起してもらいました。
たまたま政府から原発再稼働どころか、新増設の話まで出ていることもあってか、前回に引き続きたくさんの参加者がありました。

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本間さんは本題に入る前に、自らがこの問題に取り組んできた姿勢を話してくれました。それはある意味で、私たちの生き方への問いかけだったような気がします。

本間さんは「保険」という切り口から、時流に流されることなく、生活のリズムに合わせるように核時代をどう生きるかを考えてきています。本間さんの言葉を借りれば、亀のようにゆっくりと、そしてていねいに事実を拾いながら、現実を見てきています。何かおかしいとか、なにかが抜けているということに気づけば、それを見過ごすのではなく、そこに目配りしていくのが本間さんの姿勢です。そこから見えてくることはたくさんあるでしょう。たとえば、専門家の論考にも「抜けていること」もある。しかもその「抜けている」という意識さえも抜けている。そういうことが見えてくると本間さんは言います。
「見えていること」で論考をまとめ、世に発表していくことだけでなく、むしろ「抜けていること」への意識をもっと持つ必要があるのではないかというのです。
「見えていないこと」、「知ること」よりも「知らないことに気づくこと」を大事にしている私としても、とても共感できる問いかけです。

本間さんは、専門である保険についても話してくれました。保険は私たちの生活のリスクを引き受けてくれるだけでなく、私たちが直面しているリスクを映し出してくれるというのです。そこから手に負えないリスクが隠されているのも見えてくる。
原発事故は、保険会社にとって「手に負えない」ものだったので、原発事故に関する保険引き受けは「政治的」なものになっていました。にもかかわらず事業化された。「保険」概念が悪用されているように私には感じます。

そういう話をした後で、本間さんは、原爆被爆と原発被曝には共通した土台があるという話から始めました。一言でいえば、それは「加害者保護・被害者放置」です。誰にとっての保険なのか。その根底にあるのは、生活視点ではなく、経済視点といってもいいでしょう。

「加害者保護・被害者放置」について、たとえば原爆投下後のGHQや政府の対応、前回話題になった第五福竜丸事件の米国や政府の対応の話とともに、1980年の原爆被爆者対策基本問題懇談会報告書の姿勢を紹介してくれました。

また福島原発事故に関しては、事故後の被害者への対応はまだ記憶に新しいですが、原子力損害賠償制度がどう機能しているかを説明してくれました。そこにみられるのは、被害者保護どころか、原発推進を前提にした加害者(原発事業者)保護だと本間さんは指摘します。
このあたりの詳しい話は、本間さんが発表されている論考(後述)をぜひお読みください。

こうした現実を踏まえて、人類生存の危機が現実化していると本間さんは言います。
つい最近も核不拡散条約会議が決裂しましたし、ウクライナでは原発が戦争に利用されています。日本でも汚染水の海洋投棄が喫緊の問題になってきています。さらには核のごみ問題も解決されないままに、なんとなく私たちの意識から希薄になってきているように思います。
核の危機よりも、電力不足で停電が起こる危機への関心が優先されているような昨今の風潮には、私は不安どころか絶望感におそわれています。

本間さんは、現実化してきている核の危機への理解をもっと広げ深める必要があると言います。
第5福竜丸事件の直後、日本では原水爆禁止署名運動が起こりましたが、1年ちょっとで署名は3200万人以上集まったと黒田さんからお話がありましたが、それに比べると現在の日本国民の核禁止の意識は大きく後退しています。しかし危機はむしろ増大し、私たちの生活につながりはじめているのですが。

本間さんは、危機が現実化しているのに対して意識はむしろ後退している。危機の大もとに向かい合って、世界の人々の声を高めていくことが大切だと言います。そのためにも、こういう話し合いや学び合いの場が大切だと言います。
参加者からは、「危機の大もと」とはなにかという質問もありましたが、本間さんは、最近発表した論考の中で、「核時代以前と核時代の「断絶」を直視し、そこからすべてを再出発させること」であり、「破局を回避するためにも、核時代の再考と共有が求められる」と書いています。

なお、本間さんの最近の論考で公開されているものを報告の最後に紹介しておきますので、お読みいただき、「いまここにある危機」への認識を高めてもらえればと思います。

また本間さんは、福島第一原発地質・地下水問題団体研究グループがまとめた小冊子「福島第一原発の汚染水はなぜ増え続けるのか」を紹介してくれました。
1冊100円で頒布しています。湯島にも何冊か購入しましたので、関心のある方は湯島に来た時に声をおかけください。ネットでも購入できます。
https://www.chidanken.jp/15_booklet/15_1_16.html

こうした「現実」にていねいに対処し、事実を広げようとしているグループは少なくありません。そういうグループを支援するだけでも、この危機を乗り越えていく力になります。ぜひこうした動きにも関心を向けて、自分でできることを探していければと思っています。

核問題を考えるサロンは、継続します。
切り口はいろいろあると思いますが、話題提供や問題提起してくださる方がいたら、ご連絡ください。ぜひ話し合いの場を作りたいと思います。

長くなってしまい、話し合いの内容を紹介できませんでした。
話し合いはいつも以上に長くなり、時間も大幅に延びてしまいました。

以下、本間さんの最近の論考です。

◆「虚構の「核のごみ」最終処分」(週刊エコノミスト Online 2022726日から4回連載)
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20210726/se1/00m/020/005000d
◆「幻の、核のごみ「文献調査段階」 問われぬ危うさ」(『科学』20223月号巻頭エッセイ)
https://www.iwanami.co.jp/news/n45930.html
◆「大量殺戮兵器を捨てない5大国 人間らしさ保障されない“核時代”」(週刊エコノミスト Online 202253日)
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20220503/se1/00m/020/001000d
◆「原賠制度から見た核のごみ問題―投げ棄てられるリスクとコスト、責任」(『科学』電子版、202011月)https://www.iwanami.co.jp/kagaku/eKagaku_202011_Honma.pdf

 

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