■「裏切られた自由」とベリングキャット
「ベリングキャット」は、イギリスに本拠を置く、調査報道機関です。ウェブサイトでいろんなことを公開していますが、そこで報告されていることは、すべて公開されている情報を収集・分析することで導かれだされた「事実」だそうです。
蛇足的に言えば、公開情報をうのみにするのではなく、「解析」し「編集」しているところがポイントです。
友人が、地元の行政活動を、この方式でウォッチしてきています。時々、その結果判明したことを教えてもらうのですが、彼はただ解析するだけではなく、しかるべきところにその事実を報告して、建設的な活動を目指していますので、とても共感できます。但し、私の感じでは、あまり報われることはないようですが。
先日の安倍元首相狙撃事件に関するサロンでも、北川さんと中島さんが、まさにベリングキャット的な報告をしてくれました。
個々の「事実」や「報道」だけでは見えてこないものが見えてきます。
そうした個々の情報から、その意味を解こうとする姿勢を「陰謀論」という言葉で揶揄する人もいますが、事実を読むとは、そうした「隠された意図」を読み解くことと言えるかもしれません。
新聞やテレビのマスコミ情報は信用できないという人がいますが、報道されている情報から何を読み取るかは、受け手次第です。受け手がしっかりしていれば、マスコミ報道にはたくさんの事実が含意されています。
この1週間、一時話題になったハーバート・フーバーの「裏切られた自由」の上巻を読んでいました。上巻だけでもB5版700頁の大部なので、てこずりましたが、ようやく上巻を読み終わりました。
関係者の私信も含まれていますが、この本も「ベリングキャット」手法ですので、読み手のリテラシーが試されます。私には難しくて読み解けないことも多いのですが、とても面白かったです。少なくとも、ベリングキャットの効用は実感しました。
私が先の日米戦争に関するイメージを変えたのは、ジョン・トーランドの「大日本帝国の興亡」全5巻を読んだ時でした。学校で学んだ歴史知識は、まさにプロパガンダそのものだと思い知らされました。
「裏切られた自由」も、私の「知識」を揺るがせてくれました。知識としてはほとんど知っていたつもりですが、ここまで細かく資料に基づいて説明されると、自分の「知っていたつもり」が揺らいできます。「知識」を自分のものにしていくのは、やはり時間がかかりそうです。
明日から、引き続き、下巻に挑戦しますが、上巻で心に残った文章を一つだけ紹介します。同書の第1部第7篇「アメリカ国民の洗脳」に出てくる文章です。
国民に真実を知らせない技術がますます蓄積されている。そのための手段にあらたにラジオ放送という武器(手段)ができた。
ラジオやテレビは、事実を広く広げていくための手段だと私は思っていましたが、どうも当初から統治者たちはそうは思っていなかったようです。
私も根本から「洗脳」されていたのかもしれません。
しかし「ベリングキャット」によって、事実を垣間見るためには、ラジオやテレビは有効なメディアです。
フーバーの努力を無駄にはしたくありません。
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