■第22回万葉集サロン「〈歌〉の語り、悲劇の形象ー大津皇子と大来皇女」のご案内
今回は、大来皇女の歌を中心に、万葉集が新たな表現性(「歌」の語り)への道を拓く背景を見ていきたいと思います。
升田さんによる案内です。
天武天皇崩御の後、謀反を企てたとして1ヶ月足らずの内に死を賜った大津皇子。『日本書紀』はその時の様子を、異例とも言える筆致で記しています。『懐風藻』『万葉集』には皇子の臨終の歌が残されています。
『万葉集』には、斎宮を解かれて伊勢から戻された姉大来(大伯)皇女の孤独な哀切歌が時間を逐うようにして並んでいて、その「語り」は読む者の心をうちます。しかし、これらの歌(特には大来皇女の)には、後人の作った仮託説が強く支持されています。そうであるならば、人の心の内部に分け入ってその真情を歌に表現するにはまず作者自身(仮託を担う人)が自分の内部を見つめるのでなくてはなし得ません。柿本人麿を作者として推す研究者もいます。
自らの心を歌った独詠歌といっても憚らないようなこれらの歌群。
『万葉集』には儀礼的な挽歌がたくさんありますが、大津皇子のような、自身による臨死歌はありません。大来皇女の歌のような、深く静かに自己を観想する歌もまだありません。
「人間」を見つめる目の先にあるのは何なのか。
抒情歌でありながら物語の核を形成するあり方は、後の『源氏物語』など平安時代の文学へと繋がって行く素地を持っています。これまで万葉歌の言葉(詞)や表現から、古代の共同体「た〈他=多〉」の中で緩やかに共生する「わ〈我〉」と「な〈汝〉」、そこから「〈わ〉と〈な〉」との対峙、「わ」の覚醒、そして「自己」の確立へと進む有りようを探ってきました。大津皇子事件は、「た」「わ」「な」の関係を和歌世界の中でさらに大きく変容させてゆく契機であったのかもしれません。
万葉集の歌をただ読むだけではなく、そこから日本人の意識の変化を読み解いていく升田万葉集サロンの面白さに、ぜひ多くの人に触れていただきたいと思っています。
万葉集を読んだこともない方も、詠み込まれている方も、きっと新しい気づきをもらえると思います。
みなさんの気楽なご参加をお待ちしています。
〇テーマ:「〈歌〉の語り、悲劇の形象ー大津皇子と大来皇女」
〇日時:2022年8月21日(日曜日)午後2時~4時
〇場所:湯島コンセプトワークショップ
http://cws.c.ooco.jp/cws-map.pdf
〇講師:升田淑子さん(万葉集大好き研究者/元昭和女子大学教授)
〇会費:500円
〇申込先:佐藤修(qzy00757@nifty.com)
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