■ドラマ「始皇帝」
昨日、中国ドラマ「三国志」について書いたのですが、思っていた以上に観ている人が多く、コメントもいただきました。なかには、三国志をテーマにサロンをやったらという提案までありました。
それで、ついでに同時に観ていた「始皇帝」についても一言。
これも78話という長編でした。
制作に14年かかったそうですが、ドラマとしては無声時代の映画を観ているようでかなり前の制作作品だと思います。「三国志」と比べると時代の変化を強く感じますが、内容を通底する精神(文化)は同じです。
忠孝思想が強く流れています。
中国が共産主義や社会主義国家などとはとても思えません。
私の関心事は、なぜ始皇帝は焚書坑儒というような「蛮行」を行ったのか。
それと彼の出生の秘密や名前だけしか知らなかった李斯のことを知りたかったのが、観始めた理由です。
焚書坑儒に関しては、納得できました。
異文化を統合して平和を実現するためには、当時の状況ではまだ多様性は許されなかったのです。
いわゆるゼロベースからのグレートリセットのためには、多様な知識や文字は邪魔になったわけです。言葉自体が未熟だった当時の状況では、それは合理的だったのだと思います。
しかし、20世紀の中国の文化大革命やカンボジヤでの蛮行は、合理的とは言えないでしょう。
また、「三国志」でもそうですが、重要な会話は、決められた表現が使われています。古書古伝に残された「言葉」を子どもの頃から学んで、それを駆使して会話が成り立つのです。つまり、当時の言葉は、個人の言葉というよりも「神の言葉」だったような気がします。これも改めて確信できました。
これは、湯島での万葉集サロンのテーマのひとつでもありますが、日本でも同じことが起こっていたのです。教養とは、神の言葉、古人の言葉を記憶することだったわけです。
知のあり方がいまとは全く違っていたようにも思いますが、よく考えてみると、いまもまだ同じかもしれません。
昨日の湯島の集まりでも、ある人が、言葉の数(ヴォキャブラリー)が少ないと話についていけないことがあるというようなことを指摘していました。
しかし、言葉を媒介とした知には限界がある。いやむしろ知を阻害するのではないかと私は思っていますが、しかしその一方で、言葉は知らない世界への入り口になりえるとも思っています。
「始皇帝」から話が離れていますね。
中国ドラマの「始皇帝」は史実を丁寧に追ったもののようですが、悪名高い呂不韋に関してはかなり好意的に描かれていました。
しかし始皇帝が呂不韋の子どもかもしれないということはかなり明確に示唆されていました。
一説では呂不韋はユダヤ系の人だと言われていて、もしそうなら始皇帝にはユダヤ人の血が入っていますが、さらに秦が滅びた後、秦の王家は華南に移り、朝鮮半島を経て、日本列島に来たと言われていますから、日本ユダヤ同祖説につながっていきます。
古代日本の秦一族はユダヤ系かもしれませんし、私が好感を持っている天武天皇は新羅系(ユダヤ系?)とも言われていますので、もしかしたらユダヤ系かもしれません。
また本題から外れました。
「始皇帝」では、統一前の七国それぞれを支配する人たちは、婚姻関係でみんなつながっています。ヨーロッパの近世と同じです。そこでは支配層と生活層が分離していたわけです。国家は、生活者にとっては迷惑な制度だったと思います。
昨今のグローバルな世界は、1%の富裕層と99%の生活者層とに分かれだしていますが、まあそのモデルが秦の時代にあったわけです。
もう一つ現代と通ずると感じたのは、李斯や韓非のような「参謀」や「知識人」が大きな力を持っていたことです。
これは三国志における司馬懿や諸葛孔明にもつながっていくわけですが、参謀の役割はたぶんいまや終わったように思います。これからその役割を果たすのはAIでしょうが、AIを支えるのは生活者たちのビッグデータです。
つまり集団(社会・国家)の統治の視座が全く変わってしまっているのです。
もはや李斯や司馬懿の時代は終わったのです。
しかし、参謀が地位を得たはじまりの頃の話として、「始皇帝」は興味深かったです。
同時に、最近の日本の政治や経済の世界で、「参謀」や「人脈利用者」が私腹を肥えさせているのが、いささか悲しいです。まだそんなことをやっているのか、と。
このドラマにはたくさんの人が出てきますが、私にはほとんど名前も知らない人ばかりでした。しかし78話も見てしまうと、無機質だった秦の話が私の中では生き生きとしてきました。始皇帝はやはり好きになれませんでしたが。
今度はアニメ「キングダム」を見てみようと思います。
これも長編ですので、大変そうですが。
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