■「原爆投下、米国人医師は何を見たか」(原書房)をお勧めします
先日、朝日新聞で、アメリカのウィリアムズ大のジェームズ・L・ノーランjr.教授のインタビュー「核の正当化にあらがう」を読みました。
ノーラン教授の祖父は、原爆開発のためのマンハッタン計画や広島・長崎への原爆投下に医師として関わったそうです。その祖父の残した資料に出合い、そこから改めて、マンハッタン計画から原爆投下、さらにはマーシャル諸島での原爆実験などを調査し、祖父の資料を公開しました。日本でお今年の7月に翻訳出版されているのを知りました。
原著は「ATOMIC DOCTORS」、翻訳は「原爆投下、米国人医師は何を見たか」(原書房)です。翻訳の副題は「マンハッタン計画から広島・長崎まで、隠蔽された真実」とありますが、マーシャル諸島での原爆実験(いわゆる第5福竜丸事件もそこで起こりました)に関する隠蔽事実なども含まれています。
ノーラン教授もインタビューで応えていますが、もし医師たちが報告していた原爆の起こした放射線被害が世の中に公開されていたら、歴史は変わっていただろうと思います。しかし、本書で明らかにされているように、米軍はその事実を隠蔽し、実用可能な兵器として展開してきているわけです。
教授は、壊滅的な被害をもたらす兵器を肯定する考え方の源流には、広島・長崎における放射線の影響を隠蔽した米軍の活動があるとも語っています。
本書の「放射線とその言説の管理」と「ビキニとエニウェトク」はとても興味深いです。たぶんそこで書かれている米軍の体質はいまもなお変っていないでしょう。
そしてもっと恐ろしいのは、多くの日本人さえもが、核兵器のもたらす被害を過小評価していることです。さらに、私は核兵器と原発は同質のものと捉えていますが、いまだに「核の平和利用」などという言説を多くの日本人が信じていることも不安です。
ぜひ多くの人に読んでいただきたいと思い、紹介させてもらいます。
とても人間味あふれる読み物になっていますが、そこからのメッセージはいろいろなことを考えさせられます。
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