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2022/12/17

■湯島サロン「起業家として〈働く〉を考える」報告

「働く」をテーマにする3回目のサロンは、さまざまな立場から「働くこと」を体験してきている橋本典之さんに体験からの「働く」観を話してもらいました。

このシリーズのサロンは、私にはとても多くの示唆を与えてくれるのですが、どうも「働く」という言葉が、お金を稼ぐ行為と受け止める方が多いようで、いつも参加者が少ないのがとても残念です。

私は、「稼ぐ」と「働く」はまったく別のものだと考えていて、働くことや仕事や事業という言葉が、あまりにも金銭につながっている風潮を見直したいと思っています。そうした「働く」観の見直しこそが、お金に縛られた社会(生き方)を変えていく起点ではないかとさえ思っています。

今回の橋本さんの体験からのお話には、そうした私が考える「働く」の本質が語られていたように思います。ついでにいえば、「起業家」というのも、お金を稼ぐ意味での「起業」に限られませんが、橋本さんの「起業」動機も「起業家意識」も金銭ベースの経済の話ではありませんでした。

橋本さんはまず、自己紹介に重ねて大学時代に経営学の教授(北矢行男さんです)から学んだ「会社は入るものではなく創るものだ」という言葉を紹介してくれました。
これは会社に雇用されずに起業しろという意味ではありません。会社に入社しても、会社から「働かされる」のではなく、会社の場で、自らが主体となって仕事を創り、会社を活かしていけというような意味だと言います。

その言葉が橋本さんに大きな影響を与えたようですが、橋本さんは大学卒業後、高齢者グループホームで介護職員として働きながらNPOのスタッフとしても活動。その後、理学療法士の資格を得て、病院に勤務。そして仲間と一緒に、こどもも高齢者も、みんなそれぞれが、自分がなりたい暮らし(活動)を自らデザインできるようにという理念のもとに、株式会社アクト・デザインを起業しました。

3人で始めたその会社は、いまでは50人近い規模になり、組織を維持していくという経営者の視点でも、「働く」ということを日々考える毎日になっているそうです。
http://www.act-design.org/about.html

こうした会社の理念やビジョンも、橋本さんの「生き方」につながっていて、そうしたこともとても示唆に富むものでしたが、今回のテーマである「働く」に関しては、個人としての立場と組織を経営する立場から、その難しさと嬉しさを話してくれました。いろんな問題を、肯定的に受け入れている橋本さんの生き方にも教えられることはたくさんありました。

橋本さんは、実際の仕事の例として、終末期の患者に対するリハビリ対応の話をしてくれました。企業としてはもうリハビリ対象にならないような場合も、時に橋本さんは個人的に対応しているようです。経営者でもある橋本さんは、組織の立場で働きながら、個人としても働いている。20年前に彼と知り合ったときと同じ姿勢にうれしさを感じました。

話し合いもいつもながら示唆に富むものでしたが、今回は橋本さんも長年関わっている全国マイケアプランネットワークの島村さんや「お金は価値じゃない」が持論の竹形さんも参加していたので、いつも以上に話は広がりました。
みなさんにその内容をうまくお伝えできないのが残念です。いつかおふたりにも「働く」サロンをお願いしたいと思います。

橋本さんは、「働く」とは「社会との接点づくり」だと捉えているようです。そして、その接点における自分の「働き」は社会にとっての小さな歯車かもしれないが、そういう小さな歯車がうまくつながりあって、大きな歯車を動かしていけばいいと考えているようです。
個人の「働き」(生き方)が、社会のあり方を創り出していくと言ってもいいでしょう。働くことは「お金稼ぎ」には決してとどまらないのです。

橋本さんはまた、起業してからは行動することの持つ力に驚かされているといいます。
どんなに小さくても、社会との接点で歯車が動き出すと、それが大きな歯車につながっていくということかもしれません。

今回のサロンには、大きな問題意識を持っているにも関わらず、なかなか動き出せずにいる人も参加していました。動き出すことはそう簡単ではありませんが、動き出せば、いろんな力が「働きだす」のかもしれません。そんなことにもまた、「働くとは何だろうか」を考えるヒントがあるような気がします。

みなさんにお伝えしたいことがたくさんあったサロンですが、うまく報告できないのが残念です。
次回は、さらに視点を「生き方」の方に振って、「NPO(ボランティア)として働く」ことをテーマにしたいと思っています。

「働く」を考えるサロンは、ビジネスの世界だけを話題にしているのではありません。個人の生き方や社会のあり方を、問い直そうというのがテーマです。ぜひ様々な立場の人に参加してもらいたいと思っています。社会のなかで「働いていない人」などいるはずがありませんから。

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