■外交が見えない
昨日の朝日新聞に、元外交審議官の田中均さんのインタビュー記事が載っていました。
田中さんは、私とは考えは違いますが、いつも穏やかな口調とは裏腹に、極めて本質をついた示唆に富む指摘が多く、私にも信頼できる数少ない専門家のおひとりです。今回のインタビューでの発言も、とても共感できるものでした。
インタビュー記事のタイトルの「外交が見えない」というのは、私の最近の感覚にぴったりでした。
もちろん私に日本政府の外交が見えないのは当然ですが、田中さんの指摘しているのは、総理大臣も政治家も、外務官僚も自衛隊トップも、「外交」が見えていないことのようです。それも全く共感するところですが、しかし、もしそうであれば、最近急に議論されだしている防衛費の倍増方針は、恐ろしい話です。昭和初期よりももっと恐ろしい。
そう思っていたら、昨日のBS-TBSの報道19|30に、田中さんも出演し、日本の安保政策の大転換が取り上げられていることを知りました。昨夜はめずらしく用事があったので、録画しておき、今朝見せてもらいました。
出席者は、田中均さん(元外務審議官)、中西寛さん(京都大学大学院教授)、小谷賢さん(日本大学教授)、それにコメンテーターとして堤伸輔さん。
とても示唆に富む話し合いで、多くの人に見てほしい内容でした。
特に政治家には見てほしいですが、残念ながら望むべくもないでしょう。
しかし、出席者はみんな、政治家に変わってほしいと望んでいます。そして、そろそろ明治時代に構築されたシステムから抜け出ないといけないというのも共通認識だったように思います。
印象的だったのは、田中さんや小谷さんが、日本の外務省官僚は政治家への対応や資料づくりに追われて、肝心の外交の仕事をする暇がないという指摘でした。
こういう傾向は何も外務省だけには限りません。
人類学者のデヴィッド・グレーバーが明らかにしてくれたように、組織社会では、「ブルシット・ジョブ」が横行するのです。私も、1980年代以来、それを感じていて、「みんな忙しすぎて仕事をする暇がない」と言っていましたが、その意味は冗談などではなく、素直にそう感じていました。それもあって、いま湯島のサロンでは、「働くとは何だろう」をテーマにしたサロンをつづけています。
日本では、インテリジェンスを重視していないこと、それともつながりますが、専門家を育てないことも指摘されていますが、これも私が会社に入社したころから議論されながら、一向に変わっていない事態のように思います。
田中さんが、最近の安保関係者の多くは、「マッチョ」だと指摘していましたが、もしかしたらここに事態の本質が顕れているのかもしれません。
私にはとても示唆に富む番組でしたが、政治家へのメッセージは、引き続き取り組んでいくとメインキャスターの松原さんが公言しましたので、これからに期待したいと思います。
ちなみに、この番組のホームページに、動画がアップされるはずですので、お時間が許せばご覧ください。
https://bs.tbs.co.jp/houdou1930/
ちなみに、この番組の冒頭で、日銀の黒田総裁の記者会見に関して、コメンテーターの堤伸輔さんが「怒り」を感じさせるような思いを吐露していました。コメンテーターは、こうあってほしいものです。
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