■湯島サロン「市会議員選挙に立候補して考えたこと」報告
今年からまた「政治」に関わるサロンを継続的に開催していきますが、その第1回目として、昨年末、市議会議員選挙に立候補し、残念ながら落選した石井嘉隆さんから、その体験とそれを契機に改めて地域政治に関わっていこうと決意した経緯や展望などを話してもらいました。
ちなみに、石井さんはこれまで特に「政治」との接点はなく、今回もまったくの「市民の一人」として立候補しました。選挙は何もかも、初めての体験。落選したものの、その体験はとても楽しく、しかも人生の次の展開につながりそうだと言います。
10人ほどの現職の自治体議員にもサロンのお誘いをしたのですが、残念ながら地域イベントに参加するなどの理由で参加できない人が多く、実際に参加したのはおひとりだけでした。ここにも今の自治体議会議員が何をやっているか垣間見える気がします。
石井さんは、まず「なぜ立候補したか」を自らの生い立ちから話し出しました。政治や行政とはあまり縁もなく生きてきたため、立候補を決意してからも、何をやっていいかわからず、その分野の先輩の指導を受けながら、いわゆる「選挙活動」に取り組んだそうです。
ちなみに石井さんは無所属で立候補しましたが、最近は市議会議員選挙まで政党に属していないと選挙活動もしにくくなってきているようです。
そのせいか、私が住んでいる我孫子市でも政党に所属する立候補者が増えています。市町村議会にまで政党支配に置かれてきている状況は、地方自治の劣化につながると思いますが(自治と分権は方向性が真逆です)、その流れは強まってきています。素人の私から見ても、政党に所属していると選挙では圧倒的に有利なのがわかりますから、立候補者には政党からの誘いは魅力的なのでしょう。
しかし、そこから変えていかないと社会は変わらないでしょう。いつかそんな問題も、このシリーズのサロンでは議論したいと思っています。
石井さんは、立候補の際の供託金や選挙活動費用がどのくらいかかったかも少し話してくれました。その話を聞いていると、自分たちで選挙活動をやろうとするならば、手の届く範囲の金額のようです。ただ問題はどうも、お金の問題よりも手続きの難しさで、それが普通の市民の立候補の制約になっているようにも感じました。
ここでも興味ある話がいろいろと出てきたのですが、オフレコなので報告は差し控えます。私の憤りの念はかなり高まりましたが。
ところで石井さんは、立候補したことで市役所に行く機会が増えたそうですが、それによって市の行政に関しても理解が深まり、つながりも増えたようです。そうなると自ずと地域の問題への関心も高まっていく。
そして、市議会議員にはなれなかったものの、市民としての地域活動はできることがいろいろとあることに気づいたようです。もっとも石井さんは立候補前から、そうした地域づくりに向けての活動はいろいろとやっていたのですが、行政との連携などが見えてきたのかもしれません。
いずれにしろ立候補することで、地域とのかかわり方が変化することはあるようです。そういう意味で、選挙というのは意味を持っていることに気づきました。立候補には至らなくても、選挙の時にだれに投票すればいいかなどと言っているのではなく、近くの立候補者の事務所に顔を出して話を聞くだけでも政治への関心は変わるかもしれません。国政選挙ではそう簡単には顔を出せないでしょうが、地方選挙の場合は気楽に顔を出しても歓迎されるはずです。
話し合いでは、たとえばタウンミーティングの話や議員報酬の話、首長交代と行政の継続性の問題、行政と地方議員と国会議員との役割の違いなど、いろいろと出ました。
たまたま昨年話題になった杉並区の岸本区長の支援者も参加していて、当選後の状況の話を少ししてくれました。そこには、自治体の行政と市民活動との関係に関して考えさせられる話も出ました。
市民活動と自治体行政とは本来は共振するはずですが、残念ながら現在の日本の自治状況の中では、むしろ対立しがちなのかもしれません。地域分権と地域自治とは似て非なる状況なのです。
参加者の一人から、政治への関心を高めるためにも、生活者(主婦や高齢者、学生、子どもなど)の目線を捉える課題解決が必要で、そこから政治を変えていけるのではないか。その意味でも地方政治は重要だという意見がありました。
その一方で、生活レベルの政治もいいが、地域政治にあっても安全保障や憲法問題も大事ではないかという指摘もありました。それに関しては、地方政治では実際には解決できないことも多く、問題のすり替えにされかねないので、地方議員の使命(責務)を基軸に活動しているという現職の議員の参加者の発言もありました。
ところで石井さんは落選後、立候補者に声をかけて、市民に呼びかけて選挙を振り返っての集会を開いたそうです。実際に石井さんの呼びかけで参加してくれた立候補者はあまりいなかったようですが、そういう集まりを開催するだけでも大きな意味がありそうです。
石井さんは、これからも地域課題をテーマにした学習会や話し合いの場を開催していく予定だそうです。子どもたちの議会傍聴活動にも関心をお持ちです。議員にはなれませんでしたが、市民の一人として、取り組めることをいろいろと見つけたようです。そうした活動を通して新しいネットワークも広がっていくでしょう。そしてまた時期が来たら、地方政治に参加していく再挑戦するかもしれません。
サロン終了後、参加者から2つの声が届きました。
一つは、自分でも立候補できそうだと感じたので立候補を考えてみたいという声。
もう一つは現職の議員の話をもっと聞きたいという声。
いずれも地域政治への関心が高まったと言えると思います。
このテーマのサロンは、引き続き継続します。
現職議員や元議員の方で話題提供していただける方、あるいは参加者に問いかけたいことがある方、ぜひサロンをやってくれませんか。
政治は決して私たちの生活と縁遠くはなく、隣り合わせにあることをもっと多くの人に気づいてほしいと思っています。そこからこそ、日本の政治は変わっていくでしょうから。
サロンをやってもいいという方、ぜひ私(qzy00757@nifty.com)までご連絡ください。
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