■湯島サロン「対価目的の仕事には価値がない?」報告
「働く」をテーマにしたサロンは、今回は「対価目的の仕事には価値がない?」というタイトルで、長年、収入目的の対価労働ではなく、周りに喜びを与える仕事を主軸に「働いてきた」竹形さんに問題提起していただきました。
竹形さんは、まさに「傍(はた)を楽(らく)にする」仕事を大事にしています。「稼ぐ(わが家のために米を得る)」仕事も時にはやるようですが。
「対価目的の仕事には価値がない」というとすぐ反論が出てくるかもしれないが、今回の問題提起は抽象的な考え方なのだと、先ず竹形さんは説明したうえで、話をはじめました。
そして「労働価値説」や「実体経済と金融経済」についてさらっと説明したうえで、ITが人間の労働をどんどんと失くしていると言って、ITでなくなった、あるいはこれからなくなるだろう人間の仕事を例示してくれました。
つまり、ITなどのおかげで、人間がやらなくてもいい仕事が増えてきている。そういう仕事は、人間がわざわざやる必要がないのではないか。そういう意味で、竹形さんは「価値がない」と言っているのです。そして、そういう仕事は次第になくなっていくだろうと言うのです。
一方、ITには任せられない人間にしかできない仕事には、そもそも合理的な値段はつけられない(画一的な金銭評価はできない)と竹形さんは言います。
それは「働く」シリーズの前回のサロンで話題になった、相談の対価の金銭評価の難しさに通じます。そして竹形さんは、困りごとの解決をお金基準のビジネスにするところに問題があるのではないか、と言います。
そこからさらに話は広がり、そもそも今のようなお金中心の経済でいいのかという話になっていきました。そして竹形さんは、金銭利益を目標にしたビジネスも、将来的には限りなく、利益ゼロになっていくのではないか、とも言います。
竹形さんは明言されませんでしたが、(金銭的)価格を基準にするのではなく、価値を基準にした経済へと変わっていくだろうというのです。
金銭基準の経済の捉え方でいまの日本を考えると世界的には水準は低くなっているかもしれないが、お金でない価値(暮らしやすさ)に関しては、日本は最先端ではないか、と竹形さんは言います。そして、本当に私たちの生活にとって大切なのは、そうした価値ではないかというのです。
そこからベーシックインカムやシルビオ・ゲゼルの「自由通貨」の話にまで広がり、そもそもの経済のあり方やお金の捉え方、さらにはビジネスの捉え方を変えなければいけないという話になっていきました。
そして最後に竹形さんが言ったのは、「人を喜ばせることは楽しい」。人を喜ばせるために使う時間や労力には価値がある。お金を稼ぐ仕事は楽しくないというのです。
そして、上意下達型の階層化社会から横のつながりを基本とするネットワーク社会に移ろうと締めくくりました。
他にも「恩送り」とか「医療・介護」の話など、いろいろと話題はありましたし、話し合いも面白かったのですが、長くなるので省略させてもらいます。
ちなみに、こうした話の背景には、すべて竹形さんの日頃の生き方がありますので、単に絵にかいた話ではないのです。竹形さんの実際の体験につながっている話であり、竹形さんがいまその実現に向けて取り組んでいる話です。そうした生き方のおかげで、最近、経済的苦境を乗り越えることができたという生々しい話もありました。
お金を稼ぐことが仕事だという考えが社会を覆いだしたのは、日本ではたかだかこの60~70年ではないかと思います。そのおかげで、日本は高度経済成長を実現し、私たちの暮らしも便利になったのは間違いありません。
でも反面、それで失ってしまったものも少なくありませんし、こういう生き方がこれからもずっと続けられるかどうかの懸念も強まっています。
竹形さんの問題提起は、いま日々の暮らしに金銭的に追われている人にとっては、現実からかけ離れた抽象論・理想論と受け取られるかもしれません。
でも大切なのは、どういう社会を目指すのかです。
人を喜ばせることこそが「働く価値」であるならば、そういう方向に向かって、小さなことでもいいから、まずはできることから始めればいい。
お金のために働くことから、喜びのために働くことへと少しずつ軸足を移していく。そうすれば、「働くこと」が楽しいことになるかもしれません。お金がわずかしか得られなくても、楽しく安心して暮らせるようになるかもしれません。
お金を稼ぐことが仕事であるという常識から、ちょっと離れてみたら、何かが変わるかもしれません。そんなことを改めて確信したサロンでした。
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