■湯島サロン「越境体験のすすめ」報告
櫻田周三さんの「越境体験のすすめ」のサロンは、いつもとはちょっと違った顔ぶれのサロンになりました。
それぞれ「越境」というテーマに関心を持っている人が多く、その顔ぶれを見て、櫻田さんは用意してきた話を急遽変更して、ご自分の「越境体験」や越境支援活動について、体験的な話に切り替えました。
用意してきた話も是非聞きたかったのですが、生々しい櫻田さんの体験談はとても興味深いもので、改めて「越境とは何か」、そして「なぜ越境なのか」を考えさせてくれるものでした。
たまたま櫻田さんが越境体験支援プロジェクトを立ち上げた頃、その活動を「社会教育」という雑誌に投稿した記事を思い出した同誌の編集長の近藤さんも参加してくれました。近藤さんが取り組んでいる社会教育もまた、ある意味での「越境体験支援プログラム」と言ってもいいでしょう。
櫻田さんが考えている「越境体験」とは、単なる異体験ではなく、「自分の所属する組織やグループとは異なる背景や文化の組織やグループに一定期間身を置き、そこに所属する人たちと何らかの活動を行うこと」です。
越境するプロセスもまたとても重要な意味を持っていますし、越境体験後の見返りや変容への気づきも大きな意味を持っている。そういうことも含めて、櫻田さんは「人間力」を高めるプログラムを構想しているのかもしれません。
櫻田さんは、長年、大学で主に学生を対象にそういうプログラムを展開し、越境体験が、人を育て、人生を豊かにしていくことを体験しています。ですから、学生だけではなく、さまざまな人たちに対して、そういうプログラムを展開したいと思っているのです。
しかし時代の流れは、「越境」どころか、むしろそれぞれが自らの世界に閉じこもり、タコツボのなかでさらに仲間内の、時には自分だけの居場所や「似非コミュニティ」をつくっていくという「分断社会」へと向かっているような気もします。まさにソーシャルキャピタル(社会関係資本)が失われてきている。
であればこそ、櫻田さんの構想は今まさに求められていることではないか。
自分が安住できる「コンフォートゾーン」に閉じこもるのではなく、外の世界をしっかりと体験し、世界を広げていく支援プログラムが必要なのではないか。
最近では、ちょっとした異質な世界を体験できるビジネスも増えていますが、櫻田さんが考えているのは、そういういわば体験レジャーではないのです。しっかりと自らの人生をかけての「越境体験」なのです。
私も「越境体験」には魅力と意義を感じます。
ただ、「意図した越境体験」「仕組まれた越境体験」よりも「偶発した越境体験」が、私の人生を豊かにしてきてくれた気がします。そういう視点からは、偶発性を引き寄せる仕組みや偶発性を活かす仕組みが大切なような気もします。
櫻田さんからも、キャリア形成にとっての「偶然性」の話題も出ました。
ちなみに、湯島のサロンは、そういう偶発的な越境への道を引き寄せる場を意識していますが、道が見つかっても、そこにどう入ればいいかはそう簡単ではありません。ですから、櫻田さんの構想にはとても関心があります。
参加者はみんな、越境に関心が強かったので、話し合いでは、櫻田さんの思いや構想への具体的な提案やエールも多かったような気がします。
サロンの後、櫻田さんから参加者みんなにメールが届きました。
私がやりたかったことは越境体験というよりは、ざっくり言えば人間力発揮につながる体験との遭遇支援であり、そのために大学で行っているような社会参加をテーマとした経験学習の場づくりができたら、というものでした。
今日のもう一つの気づきである「自分こそコンフォートゾーンに居座っている」という自覚により、確信のない一歩の踏み出しもやむを得ないと思い始めたところです。
ですので、自らを奮い立たせて何かやってみようと思います。
「越境」は新しい物語を生みだすのかもしれません。
櫻田さんのサロンは続きそうです。
櫻田さんの構想に関心のある方、ぜひご連絡ください。櫻田さんにつなげます。
私が現世から越境する前に、櫻田さんのプログラムが動き出すことを楽しみにしています。
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