■「模倣の罠」を読んで、プーチンやトランプへの理解が深まりました
最近、民主主義も自由主義も世界的にあまり人気がなく、どちらかと言うと、反民主主義や反自由主義が世界を覆いだしてきていますが、それがとても気になっています。
昨日、イワン・クラステフとスティーヴン・ホームズの共著「模倣の罠」を読んで、その背景がよくわかりました。
2021年発行の本ですが、最近のプーチンやトランプ、さらには習近平の行動も、この本を読むと理解が進むように思います。
このふたりの最近の言動には、私もかなり違和感を強めているのですが、あまりに単純に非難する人が多いのがむしろ不安です。
非難する前に行動を理解することが大切です。
基本は、グローバリストとナショナリストの対立構図で描かれています。それには若干の違和感はありますが、本書の立場に立てば、それら3人のリーダーに対して、非難しているだけでいいのかという気になります。彼らのメッセージはしっかりと受け止めることが大切ではないかと思うのです。
著者は、1989年から始まった「模倣の時代」(共産主義世界が終焉し、自由主義社会が唯一の目指すべきモデルになり、みんなが欧米の民主主義・自由主義を模倣するようになった)が、最近の習近平中国によって終わりを迎えていると分析しています。
その間、プーチンはいち早く、そのモデルの問題点を可視化するために「鏡映し」戦略をとり、西側の民主主義体制の不安定さと弱さを明らかにしてくれたと言います。
西洋の模倣を中心に組織された世界は、アメリカの利益に従順に従う自由主義の世界になることを意味していた、とも書いています。
しかも、冷戦の終焉によって、敵を失ったアメリカは傲慢に振る舞いだした。ちょうど野党を失った日本の自民党が傲慢になってひどい政治をつづけているのと同じです。
どんな場合も、自らにとって脅威となる「ライバル」の存在は必要なのかもしれません。
さらに著者は。「西洋がプーチンのロシアに似始めている」とも書いています。
「模倣」は「模倣される側」にも「模倣」を誘発するのです。
それ以外にも、とても示唆に富む本です。
民主主義や自由主義を大切にしたい方には、ぜひお薦めします。
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