■日本の子どもたち(15歳)の精神的幸福度は38か国中37位
以前、話題になりましたが、2020年のユニセフのレポートによれば、日本の子どもたち(15歳)の精神的幸福度は38か国中37位だそうです。
今春スタートしたこども家庭庁がさらに幸福度を下げないことを祈るばかりです。
最近また、引きこもりや不登校の関係者との接点が増え、なにかその背景にあるものが気になりだしました。目の前だけ見ていては何も見えてきません。
それで、小国喜弘さんの「戦後教育史」(中公新書)を読みました。
あとがきに、著者の小国さんの執筆の背景にある思いが書かれていました。
この部分だけでも多くの人に読んでほしいと思い、長いですが、勝手に引用させてもらいます。一部省略しています。
大学院生時代から(学校に)30年通い続けたなかで、学校現場の多くは、次第に閉塞的な空気が強固となったように思える。外部者からすればおよそ不思議なルールがこまごまと制定されるようになり、子どもたちの日常を拘束するようになっていった。さらに全国学力学習状況調査の学校順位を上げるべく、子どもたちをテスト準備教育に追い立てることに力が注がれ、「子どもの仕事は遊ぶことだ」などといった言葉を教師から聴くことはなくなった。
ごく「普通」の子どもたちが「障害児」とされて、元のクラスの子どもたちから引き離されて、廊下の一番奥に設置された特別支援学級でひっそりと学んでいる光景を見ることも増えた。背後には、政治主導の教育改革があった。
現場を通して見えてきたのは、政治に翻弄される学校の姿であり、そのなかでの子どもたちの不幸だった。本書は、このような子どもたちを取り巻く不幸が戦後教育史のどのような変化のなかでつくられたのかを学校教育に即して描き出したいと考えた。
本書を読むと、学校はまさに社会の写し絵であるとともに、社会の作り手でもあることがよくわかります。引きこもりが増えているのは、親たちがみんな引きこもりのお手本を見せているからでしょうし、不登校が増えているのは、子どもたちが制度のおかしさを教えてくれているのでしょう。みんな問題の立て方を間違っているとしか思えません。
社会の未来は、学校制度のありようによって大きく変わってくることを考えれば、私たちはもっと子供たちの学校現場で何が起こっているかに関心を持つべきでしょう。
私は幸いにあまり「学校制度」に縛られずに卒業できましたが、どうもそれはとっても幸運だったようです。今の学校では、私も不登校になっていた可能性があります。
本書は、インクルーシブ教育やSociety5.0、あるいは発達障害などの政治が作る病気など、幅広く論じられていますので、多くの人にぜひ読んでもらいたいです。
暗い話ばかり読みたくないという人には、第11章の「希望はどこに」で紹介されている大阪市立小学校の取り組みをぜひ読んでみてください。映画「みんなの学校」で話題になった学校です。
学校をテーマにしたサロンをやりたい学校の先生がいたらご連絡ください。
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