■WFC4:人は孤独によって死ぬ
ワルサくんとの「コミュニケーション」は、毎日、試みていますが、状況は大きく変化してきています。問題の立て方が間違っていたような気がして、「ワルサ・ファースト・コンタクト」という名称も、前立腺がん対策という目的も、見直した方がいいかもしれません。私の中では、深化しているのですが、読者の関心とはかなりずれてしまってきているので報告を続けるべきかも迷います。
たとえば、2日前のワルサくんとのテーマは「人は孤独によって死ぬ」という話です。ワルサくんも孤独なのではないかという思いが強まっているとともに、人は病気ではなく孤独で死ぬのかもしれないという思いが浮かんできています。
まあこんな話を書いても、ピンと来る人はいないかもしれません。
4日前に友人が、心理学者のデニス・プロフィットの「なぜ世界はそう見えるのか」(白揚社)を貸してくれました。翌日、一気に読んでしまいました。
友人は、環世界やアフォーダンスの話題に関連して、私にこの本を紹介してくれたのですが、私はそのなかに出てきた「つながり」とか「ふれあい」に引き付けられました。
いささか強引な言い方ですが、ワルサくんとの関係の話のキーワードかもしれないと感じたのです。
「人は孤独によって死ぬ」という文章は、そこに出てくる文章です。
そこに20世紀初頭に話題になった孤児院での乳幼児の高い死亡率の話が出てきました。いわゆる「ホスピタリズム(施設症)」です。
こういう説明が続いていました。「単に十分なカロリーを摂取し、保温がなされ、生存の必須条件が満たされただけでは、人間の乳児は成長できない。乳児が成長するためには、情緒的・社会的滋養も不可欠なのである」。
認知症予防ゲームの普及に取り組んでいたころ、「ユマニチュード」というのが話題になり、私も関連図書を読んでみました。何のことはない、それは要するに「ふれあいこそが認知症を防ぐ」という、生活の知恵の話で、きちんと生活している人ならだれでもわかっている(しかしほとんどの人がまじめにやっていない)「人の付き合い方」をしているだけでした。
乳幼児の死亡率も、高齢者の認知症発症率も、「人とのふれあい」に大きく影響されているのです。同じように、自殺率や病死率も、「人とのふれあい」と関連があるのではないかという思いが、ワルサくんとのコミュニケーションタイムに浮かんできたのです。
コミュニケーションタイムと書きましたが、最近のワルサくんタイムの時には、主語がワルサくんになっていることが増えています。
ワルサくんもまた私の一部ですから、ワルサくんを主語に思考することは、私にもできる。それに気づいたのです。そしてそうやってみると世界は違って見えてきます。
うまく書けないのがもどかしいですが、何しろ毎日、朝晩ワルサくんと一緒にいるので、いろんなことが頭に浮かんでくるのです。
今日は、その中で、病気を起こすのも人なら病気を治すのも人だということを伝えたかったのです。
そして、同時に、「ふれあい」の大切さです。
私のなかにいる前立腺がんにどう対処するか、まだ決めかねていますが、いずれにしろ大切なのは、ふれあいの大切さです。
もし私のワルサくんが、暴走を止めるとしたら、それは私が取り組んできている「民間療法」ではなく、私のことを気にしていてくださる友人たちの思いなのでしょう。
昨日の湯島のサロンにも、サロンの前にある友人がやってきて、私がきちんと前立腺がんに向き合っていないのではないかと真顔で問いただしてくるのです。
なんでそんなに心配してくれるのか、とつい言ってしまいましたが、ここは素直に感謝すべきところでしょう。
ワルサくんも含めて、みんな私のことを心配してくれている。
そうであれば、私もまた、みんなのことを心配しなければいけません。
そして、そうしたつながりやふれあいがあって、孤独でないのなら、私は死ぬことはないのです。
「人は孤独によって死ぬ」のですから、「孤独でないと人は死なない」のです。
事実、ソクラテスはいまも生きている。
「ふれあい」を大事にした宮沢賢治は、いまもますます元気に生きている。
ワルサくんとのコミュニケーションはどこに行くのかわからなくなってきてしまいました。
でも今朝も30分、ワルサくんとの対話をしていました。まあ、ワルサくんに私の本体をとられてしまったとも言えなくはないのですが。
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