■湯島サロン「ふるさと薬膳のすすめ 郷土食は日本の薬膳」報告
長年、郷土食を『ふるさと薬膳』と位置づけ、日本各地の農業や食文化、さらには女性起業支援やまちづくり支援などに取り組んできている新倉久美子さん(東方健美研究所代表)のサロンは、食の大切さを改めて気づかせてくれる示唆に富むサロンでした。
参加者が少なかったのがとても残念ですが、来年から始まる予定の「養生サロン(仮称)」で、季節ごとに「食養生」のサロンを新倉さんがやってくださるとのことですので、食や健康に関心のある方はぜひご参加ください。
新倉さんは今回、大きくふたつの話をしてくれました。
ひとつは「土地と食」という切り口から、地域食文化の継承と創造の意味や「身土不二」の大切さを、もう一つは「季節と食」という切り口から陰陽五行説を踏まえた「食養」の取り組み方。まとめて一言で言えば、「その土地でとれた食材を食べ、その季節にとれる旬のものを食べること」(「風土はフード」)こそ、健康につながる「食養生」だというお話でした。
最近の私たちの食生活は、こうした食文化から大きく離れてしまってきていますが、果たしてそれでいいのか。そうしたことを改めて考えさせられました。
最初に新倉さんは、中国の「薬膳」には、病気を治すことを目的とする「食療」と、病気にならないよう予防するための「食養」の二面性があると話してくれました。そして、地域独自の食文化である郷土食を、薬膳的観点から見直し、現代風にアレンジして、「日々の食事によって健康を取り戻し、身も心も健やかに過ごしていくための「食養」を目的とした健康料理」として広げていこうというのが、新倉さんの「ふるさと薬膳」構想です。新倉さんは、全国各地に実際に出かけて行って、そうした「ふるさと薬膳」の芽を各地に育ててきたのです。
そうした活動の背景には、昨今の日本の食生活への新倉さんの心配があります。
日本は古来、穀物をそのまま煮炊きして食べる「粒食の食文化」でしたが、最近は欧米の「粉食の食文化」が中心になってきているため、日本人の体質との齟齬を生じ、心身両面でのさまざまな問題が起きているのかもしれません。
新倉さんは、改めて命の源である「食」について真剣に考えてみる時期が来ているようだと言います。そのためにも、古くから伝わる季節の郷土食を掘り起こし、再評価して次の世代へ伝えていくことが必要だと考えているのです。
つづいて新倉さんは、季節と食の話をしてくれました。
最近では技術の発展によって季節を問わず食材を選べますが、これは薬膳の考え方からいえば“とんでもないこと”だと新倉さんは言います。たとえば、夏の野菜は身体を冷やす作用があり、秋から冬にかけて出廻る根菜類は身体を温め、蕗のとうやわらびなどの苦味ある山菜は春の香りとともに夏に向かって注意しなければならない心機能を高める作用をもっている。そのように自然のサイクルと人間の身体は本来切り離せない。旬のものを食べることはその季節の体調を整え、次の季節への身体の準備なのです.
最後に新倉さんは中国の陰陽五行学説に基づく「五行配当表」を紹介し、季節季節の食養生のポイントを説明してくれました。
これはとてもわかりやすく、またすんなりと理解でき、誰でもすぐに取り込めそうです。
新倉さんの了解を得て、その「五行配当表」を添付しますが、簡単に言えば、食物の持つ五味五性の性質と人間の臓器との関係を五行で閑連づけ、バランスよく配合することが「薬膳」の基本であり、特に五味五性の調和が大切なのです。
そして、これに基づいて、これから向かう冬の「食養生」についても話してくれました。一言で言えば、「冬は腎臓、体を温めよ」というのが冬の食養生のポイントだそうです。
私のように、「柚子胡椒」や「黒豆」についてさえ、まともな知識のないものにもとてもわかりやすいお話で、サロン翌日から早速、私も心がけています。
盛りだくさんのお話でしたので、その一部しか報告できませんが、また季節ごとに食養サロンをやってくださるとのことなので、関心をお持ちの方はぜひ次回に。
話し合いもいろいろ示唆に富むものでした。
どうしてこんな食事情になってしまったのか、給食による陰謀のせいではないか、伝統食をきちんと伝えていくためには孫に対するおばあちゃんの役割が大きい、でも三世代交流も少なくなってきた、コンビニや電子レンジは便利だ、など、いろんな話題が出ました。
それにしても、お話を聞いていて、日本古来の食文化が大きく変わりつつあることの恐ろしさを改めて思い知らされました。
社会のあり様は、もしかしたら、まさに食によって規定されているのかもしれません。身体的なアレルギーの増加やメンタルヘルスの問題も、そうしたことと決して無縁ではないでしょう。
新倉さんが指摘されたように、改めて「食のあり方」を根本から考え直したくなってきました。
食とは一体何なのか。どなたか「食を哲学する」サロンをやってみませんか。
次回の「春の食養生」サロンは立春の頃を予定しています。
| 固定リンク
「サロン報告」カテゴリの記事
- ■湯島サロン「沖縄/南西諸島で急速に進むミサイル基地化」報告(2024.09.15)
- ■湯島サロン「秋の食養生」報告(2024.09.14)
- ■湯島サロン「サンティアゴ巡礼に行きました」報告(2024.09.06)
- ■湯島サロン「『社会心理学講義』を読み解く②」報告(2024.09.03)
- ■近藤サロン②「ドーキンスの道具箱から人間社会の背後にある駆動原理を考える」報告(2024.08.29)
コメント